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子供のヒーローから大人も楽しめるSF物語へ ガンダムがつくった巨大ロボットの現在地 ロボット大好き

産経ニュース 2024年7月4日 10時30分

7月6日から京都文化博物館で開催される展覧会『日本の巨大ロボット群像-鉄人28号、ガンダム、ロボットアニメの浪漫-』(産経新聞社など主催)の目玉のひとつが、厚さ2センチにも及ぶ「図録」である。手に取ってページをめくるとそのすごさが伝わってくる。これはもう「図鑑」いや「ロボット辞典」である。監修は〝超マニアック〟な3人目、五十嵐浩司氏(55)。「私の引き出しをあけたら、こうなりました」と豪語するこの男のロボット人生をのぞいてみよう。

普通、展覧会の「図録」といえば、展示された作品の写真と解説が一般的。ところがこの『日本の巨大ロボット群像』展の図録は、展示されていない貴重な図案が「これでもか!」といわんばかりに掲載されている。

例えば「ゲッターロボ」や「勇者ライディーン」「超時空要塞マクロス」などの完成イラストだけでなく、合体や変身するときのデッサンや下絵まで載っている。それを見るだけで、アニメーターたちのロボットにかける熱い情熱が伝わってくるのだ。

「私としては特別なことをしたつもりはありません。図録はこれまで私が蓄積した、知識や資料の一部をご覧いただいたものと思っていただければ幸いです」

いったい、五十嵐氏の「ロボット人生」とはどんなものだったのだろう。

「昭和43年生まれですからね、3~4歳のころには『仮面ライダー』や『帰ってきたウルトラマン』がそばにいたし、幼稚園の年長さんのときに『マジンガーZ』が登場。ロボットのテレビを見ているかおもちゃで遊んでいるか―でした。私だけじゃなく、当時の子供たちはみんなそんな環境でした」

では、何がほかの子供と違ったのだろう。

「みんなと同じようにロボットから卒業できなかったんです。みんな10歳になるまでに『ロボットで遊ぶなんて恥ずかしい』と卒業していく。ところが、私は10歳のころにガンダムに出会ってしまったんです」

昭和54年に登場した「機動戦士ガンダム」はそれまでのロボットアニメの常識を覆した。これまでのロボットアニメは勧善懲悪のヒーローもの。ところがガンダムは、架空の未来世界における人間同士の「戦争」を設定し、リアルな人間ドラマの中で登場する巨大ロボットは通常兵器として描かれていた。

「衝撃でした。ロボットアニメのパターンを完全に崩したわけですから。やがてガンダムの影響でロボットアニメの対象年齢が引き上げられて、卒業のタイミングを逸してしまいました」

放送終了後の55年にはプラモデルが発売され「ガンプラ」という固有名詞までできたほど。そして、その翌年には劇場版3部作の公開。こうして五十嵐氏の「引き出し」が増えていったのである。

「ロボットアニメをずっと好きでいたことが、仕事の基礎になっています。そのきっかけとなったのは、マジンガーZやゲッターロボだったと思います。永井豪先生、桜多吾作先生、石川賢先生には感謝の気持ちでいっぱいですね」。五十嵐氏は笑顔で締めくくった。(田所龍一)

いがらし・こうじ 昭和43年、青森県出身。立正大卒。平成2年から執筆活動開始。同6年に編集プロダクション「タルカス」のスタッフとなり、令和3年12月から代表を務めている。

ロボットアニメ ロマン語るオフ会

京都文化博物館(京都市中京区)で7月6日~9月1日に開催する展覧会「日本の巨大ロボット群像」。

関連イベントとして、参加者が好きなロボットについて語り合うオフ会「ロボットアニメの浪漫」が7月14日、同博物館別館ホールで行われる。アニメの歴史、ロボットの構造などさまざまな観点からロボットアニメを考察するミニトークショーなどがある。

登壇者は京都国際漫画ミュージアムの應矢泰紀学芸室員と京都文化博物館の上村茉梨絵学芸員。参加料金千円(ワンドリンク付き。また、同展入場券の提示が必要)。申し込みは同展公式サイト。

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