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演奏会形式オペラで音楽の魅力を堪能 チケット割安、ファンの裾野を広げる

産経ニュース 2024年8月28日 19時30分

音楽、演出、舞台美術などが融合した「総合芸術」といわれるオペラ。このうち、音楽のみに焦点を当てるのが「演奏会形式」と呼ばれる上演手法だ。オペラファンにとって、作曲家の意図をより感じることができる形式だが、セットなどに費用がかからないため、チケットは通常のオペラ公演より低価格。物価高騰が続く中、ファンの裾野を広げ、オペラ文化を守るための取り組みにもなっている。

責任感が原動力に

住友生命いずみホール(大阪市中央区)は今月からシリーズ公演として、指揮者、佐藤正浩プロデュースによるフランスオペラを演奏会形式で上演する。

初回公演はビゼーの「真珠とり」。古代のセイロン島を舞台に、男女が愛と嫉妬に苦悩する物語で、随所にちりばめられた美しいメロディーや多彩な二重唱、高音での繊細なピアニッシモが聴きどころだ。

同ホールは平成2年の開館以来、「コンサートホールならではのオペラ」として、演奏会形式の公演に積極的に取り組んできた。レイラ役の森谷真理は、「視覚的な演劇要素を制限することで、より音楽への理解を深めていただけるのでは」と魅力を語る。

同作のストーリーはシンプルで、登場人物も4人しかいない。照明による若干の演出はあるものの、観客への訴求力は「私たちの技量にかかっている」とし、「その責任感が、いい意味でモチベーションになっている」とも。ナディール役の宮里直樹は「ポテンシャルがマックスの状態で演奏できる」と話す。

2人は「演奏会形式に合った作品」と声をそろえ、森谷は「オペラって、そんなに敷居が高くなかったな、楽しい音楽だなと感じていただけたらうれしい」と期待を抱く。

文化を絶やさない

大阪交響楽団は、オペラを中心に活動する指揮者の柴田真郁をミュージックパートナーに迎えた令和4年度から、2月の定期演奏会では演奏会形式でオペラ上演を行っている。

「オペラという文化を絶やしてはいけない。ファンを増やす努力をし続けなければならない」と柴田。オペラのチケットは数万円することも珍しくない。物価高騰が続き、「舞台を上演することはどんどん難しくなっている」と感じる中、舞台上のセットなどの費用を抑えられ、チケットを低価格で提供できる演奏会形式での上演を決めた。

価格を抑え、気軽に来てもらえるようにするのが狙いだが、醍醐味はそれだけではない。楽団はオーケストラピットと呼ばれる舞台前の「くぼみ」ではなく、ソリストと同じ舞台上で演奏する。「楽器の音がクリアに聴こえて歌声と融合する」(柴田)ため、通常の形式より音色を鮮やかに感じることができる。

オペラを彩る舞台装置や照明などの演出は、物語の空気感や登場人物の心情を伝えてくれる。柴田は、それらは「作曲家が音符で描いている」と指摘し、「音楽だけでも、これだけの表現ができると証明したい」と意気込んだ。(藤井沙織)

佐藤正浩プロデュース いずみホール・オペラ 2024《真珠とり》

8月31日午後2時。S席1万1千円、30歳以下4千円。住友生命いずみホールチケットセンター(06-6944-1188)。

大阪交響楽団オペラ・演奏会形式シリーズ vol.3 ベルディ「運命の力」

令和7年2月9日、ザ・シンフォニーホール(大阪市北区)で午後3時。出演は並河寿美、笛田博昭、青山貴ら。S席6500円など。

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