日本では古くからエビは縁起が良い生物とされており、お正月の「おせち料理」には欠かすことのできない存在です。その理由は、長いひげと曲がった腰を持つことから長寿祈願、脱皮を繰り返しながら成長するため立身出世の縁起物など色々あるようです。ちなみに長いひげはエビの感覚器である触角で、腰は腹部にあたります。
エビの中でも高級食材として有名なイセエビは、日本近海では主に黒潮と対馬暖流の影響を受ける沿岸域に生息しています。夜行性で昼間は岩場の下や岩棚の割れ目に潜んで天敵であるタコなどの外敵から身を守り、夜になると外に出て小型のエビやカニ、貝類を好んで食べます。
イセエビとタコといえば、ウツボを入れた3種の関係が有名です。「イセエビとウツボは共生する」というものです。ウツボはイセエビの天敵・タコが大好物なので、同じ場所で暮らすことにより、イセエビを捕食しに来たタコを食べることができます。
また、イセエビはウツボがそばにいるため、安心して暮らせるというわけです。海遊館の「瀬戸内海」水槽では、これら3種が一緒に暮らしています。飼育員が生きものの状態を日々観察していますが、実はイセエビとウツボが同居している所を確認したことがありません。
自然界だけの行動なのか、時間帯によっては見られるのか、もしかすると人の目が届かない場所では一緒にいるのか、謎は深まるばかりです。
イセエビへの餌やりは、飼育員が潜水して直接手渡しで行います。岩の間に重なるように隠れているエビの触角に餌を近づけるとすぐに反応して、5対の脚を大きく広げて餌を捕まえようと迫ってきます。
普段は岩陰に潜んでいるため全身を見ることは難しいのですが、午後5時からの「夜の海遊館」では、イセエビの歩く姿を見ることができるかもしれませんね!(魚類担当飼育員 新谷和久)