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「三ツ矢先生」の手料理が育む特別な信頼関係 全方位ch

産経ニュース 2024年8月31日 9時30分

ときどき丁寧に料理を作って誰かと一緒に食べる。毎日だと面倒に思ってしまうけれど、やっぱり食べてくれる人のことを思って作る料理は家族や恋人、友達の絆を強めてくれる。オーダーメードの「愛情」という調味料入りの一皿は最高のごちそうだ。

料理系ドラマは数あれど、人気ドラマ「きのう何食べた?」のヒットを機に、ボーイズラブ(BL)を下敷きにした作品が増えた気がする。確かに男性の旺盛な食欲は見ていて気持ちがいいし、料理の上手な女性が腕前を披露するよりも、料理男子にはなぜか嫌みがないのも、視聴者層を広げている理由なのかもしれない。

毎日放送などで放送中の深夜ドラマ「三ツ矢先生の計画的な餌付け。」がまさにそのジャンル。歌手の山崎まさよしさんが料理研究家役で主演、というインパクトに惹かれて見始めたが、見るからに優しげな手料理と、その料理が結ぶ個性豊かな男性たちの人間模様から目が離せない。

ひょんなことから、人気料理研究家の三ツ矢歩(山崎)のコラム担当になった、新人雑誌編集者の石田友也(酒井大成)。振る舞われた手料理に胃袋をつかまれ、次第に惹かれていくが、三ツ矢の元恋人のカメラマン、野口薫(丸山智己)も登場し―。

元球児の石田は、りりしい眉毛が印象的な実直な青年だ。目を輝かせながら料理を夢中で頰張る姿は若さと生命力にあふれ、なんとも愛らしい。

一方の三ツ矢と薫は大人の色気がほとばしるカップル。石田に料理を食べさせるときの三ツ矢の目はうれしそうで優しく、三ツ矢が作ってくれた好物を食べるときの薫のまなざしはエロチックだ。相手の好みや体調をおもんぱかって作る手料理。そこにあふれる愛情と、食べるという本能的な行為に潜むエロスが、3人の関係性を通して軽やかに表現されている。

「きのう何食べた?」もそうだが、今作でも料理を通して真に描かれているのは、作った人と食べる人との間で育まれる特別な信頼関係と親近感だろう。

時間と手間のかかった一皿の料理を前にして五感を共有し、「おいしい」という一言で温かな気持ちが溶け合う。その瞬間の多幸感を閉じ込めたドラマは、おなかは減っても心が満たされる。(佐)

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