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知らぬ間に父に…情感に響く「海のはじまり」 イマドキTV+

産経ニュース 2024年7月27日 8時30分

つい見入ってしまう視覚表現というのがあって、好きな画家の作品などはずっと眺めていたくなる。自分の感性とシンクロ率が高いのが「好き」ってことなのだろう。

映像も同じ。画(え)作りが自分好みだと見ていて飽きない。「海のはじまり」(フジテレビ系、月曜夜)を見始めたのは、予告編でシャローフォーカス&ハイキーな映像が気に入ったから。海岸とか公園とか喫茶店とか、何げない風景も味わい深く見せてくれる。

主人公の目黒蓮さんの役回りは、知らない間に父親になっていた28歳の月岡夏。学生時代の元恋人(古川琴音さん)の葬儀に参列して、海と名づけられた6歳の娘がいることを知る。一方的に別れを告げられた後に生まれていたのだ。

夏は、自己主張弱めに生きてきたタイプ。しっかりものの恋人、弥生(有村架純さん)と穏やかな日々を過ごしていた。そこに実は娘が、と言われて-。

最初は「重過ぎるわっ」と思った。悪夢のようなストーリー展開。だけど「やばっ」「こわっ」といった雰囲気にはなっていない。

第1話では娘を演じる泉谷星奈さん(天才子役!)が、あっけらかんとこんなことを言い放った。

「夏くん、海のパパでしょ。夏くんのパパ、いつ始まるの?」

文字面はキツい。でも、一人で産んで育ててきた母の思いがしっかり描かれているから、責任うんぬんでなく、切なさが際立つ場面になっていた。理屈より情感に響いてくる。

存在感が強烈なのが大竹しのぶさん。海の祖母にして、娘を亡くしたばかりの母で、知らない男の義母になるというキーパーソン役を巧みに演じ、見る側の心情をがっつりつかむ。有村さんのキャラも魅力的。とばっちりをけなげに受け止めたと思ったら、つらい過去を抱えていることまで判明。2人のせいで毎回、頰に涙を流しながら見るはめに。

設定は非日常だけど、内容は王道の親子ドラマ。言葉控えめに余白に語らせる演出も、好きだなぁ。(ライター 篠原知存)

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