【ワシントン=大内清】トランプ米大統領は6日、米国内に広がる「反キリスト教的な偏見」を根絶するためとして、連邦機関でのキリスト教差別などを取り締まるタスクフォース(TF)を司法省内に設置すると明らかにした。トランプ氏を支持するキリスト教右派勢力が主張する米国の「キリスト教国家化」に沿ったもので、憲法が定める「政教分離」の原則に抵触する可能性が高い。
首都ワシントンで毎年開かれる全米祈禱(きとう)朝食会の関連イベントで表明した。トランプ氏は、司法省や徴税機関の内国歳入庁(IRS)、連邦捜査局(FBI)といった機関が「キリスト教徒を標的にし差別している」と主張。これらを「即座にやめさせる」ため、ボンディ司法長官に直属するTFを設置するとした。キリスト教徒に対する暴力には「完全な訴追」で対応するとも語った。
米憲法は「国教樹立の禁止」など政教分離の原則を定め、政府が特定の宗教・宗派を後押しすることを禁じている。これに対しトランプ氏の支持層には、米国は聖書的原則に基づく「キリスト教国家」であるべきだと主張する声が強い。
リベラル系の非営利団体「教会と国家の分離のための全米連合」は6日の声明で、「キリスト教ナショナリストによる米国を作り替えようとする試みの一部だ」とTF設置を批判した。
トランプ氏は6日の演説で、昨年起きた自身への2度の暗殺未遂で「宗教との関わりが変わった」とし、「米国に神を取り戻さなくてはならない」と強調した。1月20日の就任演説では、自身が暗殺を免れたのは「神に選ばれた」からだと述べていた。
またトランプ氏は6日、ホワイトハウスに信仰問題を扱う新部署を設置し、トップにキリスト教福音派の女性伝道師ポーラ・ホワイト氏を起用すると発表した。ホワイト氏は、トランプ氏の個人的な「霊的アドバイザー」とされ、第1次政権でもホワイトハウスと宗教界を結ぶ連絡役に任命された人物。「繁栄の神学」と呼ばれる現世利益的な信仰を説いており、伝統的なキリスト教界では異端視する向きも多い。