【ワシントン=坂本一之】米中西部ミシガン州で8月に実施された多国間の軍事演習に台湾軍が参加し、前年よりも人員規模を拡大していたことが2日、分かった。中国が台湾への軍事圧力を強める中、バイデン米政権は台湾の防衛力強化へ支援を急いでいる。5日の米大統領選を経て来年1月に発足する新政権でも現在の台湾支援策が継続されるかが注視される。
関係者によると、台湾軍はミシガン州兵が主導して毎年実施している多国間の軍事演習「ノーザン・ストライク」に陸軍の隊員らを派遣した。台湾軍の具体的な参加規模は不明だが、2023年の参加時よりも増やしているという。
8月3~17日に実施されたノーザン・ストライクには米国外の国・地域から1000人超が参加、計6000人超が即応力や戦闘能力の強化に取り組んだ。演習プログラムの中には、脅威が高まる無人機システムへの防衛訓練も組み込まれた。
米軍と台湾軍による演習を巡っては、双方の海軍が今年4月に西太平洋で合同演習を非公表で実施したとロイター通信が報じている。
バイデン政権は、中国の習近平政権が2027年までに台湾侵攻の準備を整えることを前提にし、台湾への防衛支援を進めている。10月25日には、高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」や航空監視レーダーシステムなど台湾への約20億ドル(約3000億円)の武器売却を決め、議会に通知した。バイデン政権で最大規模となる台湾への武器売却で、防空能力を引き上げる。
NASAMSはロシアの侵略を受けるウクライナ軍も米国の支援を受けて使用していて、ウクライナの防空能力を大幅に強化した実績がある。バイデン大統領は武器売却や演習で台湾軍の能力強化を支援するとともに、台湾有事の際に米国が台湾防衛に関与する意志を示すなど、中国の台湾侵攻を牽制(けんせい)してきた。
米大統領選の民主党候補のハリス副大統領は、バイデン路線を継承するとみられる一方、中国側が米国への反発を強める可能性もある。また共和党候補のトランプ前大統領がバイデン政権の政策方針をそのまま踏襲するかは不透明で、次期大統領の対応が注目される。