【カイロ=佐藤貴生】トランプ米大統領がパレスチナ自治区ガザを巡り、住民を域外に移住させて米国が「長期的に所有」すると発言し、多くの国から反対意見や懸念する声が聞かれた。一方で、非現実的だとして実現を疑問視したり、発言に隠された真意を探ったりする報道も出た。発言がもたらした衝撃の大きさを示した格好だ。
「歴史変えるかも」と評価
トランプ氏の発言は4日に飛び出し、ともに記者会見に臨んでいたイスラエルのネタニヤフ首相は「歴史を変えるかもしれない」と述べて評価した。他方で、中東諸国や中露はパレスチナ国家建設によるイスラエルとの「2国家共存」などを求めて反対姿勢を示し、英仏独を含む欧州でも「パレスチナ人の頭越しの解決はあり得ない」(ベーアボック独外相)といった否定的な意見が相次いだ。
英BBC放送(電子版)は、米国がガザ所有に動けば「大規模な軍事介入が必要となりかねず、それはトランプ氏が避けたいと(米国の)有権者に長く語ってきたことだ」とし、実現可能性に疑問を投げかけた。
BBCは、トランプ発言はガザを巡るイスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦維持には役立たないとの見方も示した。ハマスが住民の域外移住を回避するため、「人質を手放さない」方が得だと判断すれば、事態が膠着(こうちゃく)しかねないという分析だ。
「もっと活発な役割」促す狙い
トランプ氏はエジプトやヨルダンが拒否しているにもかかわらず、ガザから移住するパレスチナ人を受け入れるよう繰り返し迫っている。イスラエルの英字紙エルサレム・ポスト(電子版)は、こうした要求はアラブ諸国に対する交渉開始のシグナルだと解釈した。
同紙はアラブ諸国について、パレスチナ国家建設という「大義」は支持しながらも、「ガザの実質的な状況改善のためには、ほとんど何もしてこなかった」と指摘。トランプ氏の発言には、ガザの事態打開に「もっと活発な役割」を担うようアラブ諸国に促す狙いがあると評した。