【ワシントン=大内清】トランプ次期米大統領(78)は14日、次期政権の厚生長官に「反ワクチン」論者で知られるロバート・ケネディ・ジュニア氏(70)を指名すると発表した。厚生省は、新型コロナウイルス対応を主導した疾病対策センター(CDC)や食品医薬品局(FDA)、国立衛生研究所(NIH)などを管轄しており、そのトップに陰謀論的な疑似科学を信奉する人物が就くことに米国内では懸念が高まっている。
トランプ氏は声明で、ケネディ氏が公衆衛生行政を取り仕切ることで「米国は再び健康になる!」と主張した。ケネディ氏は大統領選に無所属で出馬していたが、8月に撤退してトランプ氏の支持に回っていた。
米メディアによると、ケネディ氏は過去に「すべてのワクチンは安全でなく効果もない」などと発言。2021年の著書では、第1次トランプ政権で新型コロナ対策に尽力したファウチ元首席医療顧問や、米IT大手マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏らが、パンデミック(世界的大流行)を利用して「民主主義へのクーデターを起こした」などと主張した。科学的根拠のないコロナ治療法を推奨・拡散させた一人でもある。
トランプ氏の支持層には、新型コロナワクチンは「人口抑制を狙うグローバリストの陰謀」だなどとして接種を拒む人が多く、ケネディ氏は一定の人気がある。
同氏は、14年に東部ニューヨークのセントラルパークに熊の死骸が放置されていた事件の〝犯人〟だと最近になって告白するなど、数々の奇行でも知られる。
ケネディ氏は、民主党のジョン・F・ケネディ元大統領(1963年暗殺)の弟のロバート・ケネディ元司法長官(68年暗殺)の息子で、元大統領のおいに当たる。親族の多くはケネディ氏の主張を「一族の価値への裏切り」だなどとして批判している。