【ワシントン=塩原永久】米共和党のトランプ新大統領は20日の就任演説で、「米国の衰退は終わった」と述べた。自身が大統領選に勝利して米国を率いることで、「国を誇り高く、豊かで自由にする」と強調。米国の黄金時代が始まると宣言した。一方、民主党のバイデン前政権が取り組んだ政策を覆す方針に繰り返し言及。自国利益を最優先する「米国第一」を先鋭化させる構えだ。
「国家的な成功を収める新時代の幕開けだ」
「変化の波が米国を覆っている」
トランプ氏は就任演説でそう語り、米国が「前進している」とのメッセージを打ち出した。
2017年の第1次政権の就任時、トランプ氏は演説で製造業の没落や産業の海外流出を嘆き、「米国の殺戮(さつりく)」との表現を用いた。暗い時代からの転換を図ると訴えたものの、危機感を喚起するような内容だと評価された。
トランプ氏は今回、30分程度の演説に「全世界に陽光が降り注ぐ」などと前向きな言葉をちりばめ、変化を印象付けようとしたようだ。
一方、トランプ氏が敵視するバイデン政権などの勢力への「憎しみ」は随所ににじみ出た。
演説で「急進的で腐敗したエスタブリッシュメント(既得権益層)が市民から権力と富を搾り取った」と指摘。バイデン前政権の寛大な国境対策や、電気自動車(EV)の普及策をはじめ、教育・文化など幅広い分野で前政権の施策を転換、撤廃すると力を込めた。
昨年11月の大統領選で民主党のハリス前副大統領に大勝し、国民から多大な信頼を寄せられていると自信を示した。
選挙期間中に暗殺未遂事件を切り抜けた経験については、「米国を再び偉大にするため神に救われた」と振り返った。
トランプ氏は国際情勢に触れる中、紛争当事者らの間で、和解や統合を促す役割を担いたいとの考えを表明した。世界各国が「畏怖と羨望の念をもって」接するような米国にしたいとも語った。