今年のノーベル平和賞に日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が決まり、広島に原子爆弾を投下した米軍のB29爆撃機エノラ・ゲイを見ようと思った。首都ワシントン郊外の米国立航空宇宙博物館別館に展示されており、大統領選の出張取材の合間に立ち寄った。
他の見学者に、日本への原爆投下をどう考えているかと尋ねると、ほぼ同じ答えが返ってきた。「本土決戦を回避し、数百万の米兵と日本人の命を救うために必要だった。ただし、二度と使われてはならない」。
私は、展示ガイドに「ロシアはウクライナを侵略し、核を使うと脅しましたね」と尋ねてみた。ガイドの名はグレゴリ・ヴィスロボコフさん。ウクライナ系米国人だ。彼は、「ロシアが核を使えば、ウクライナが核を放棄する代わりにウクライナの安全を保障した1994年の覚書に違反する」と強調した。ウクライナで暮らす義母は「とても怖い」と毎日、攻撃におびえているという。
大統領選は、「戦争を終わらせる」と豪語するトランプ前大統領が勝利した。ヴィスロボコフさんは、ただ戦争を終わらせるのではなく、「ウクライナの主権や領土、文化、安全が保障される終戦」を望んでいた。彼らウクライナ系米国人らの願いに応える「ディール(取引)」をトランプ氏には成立させてほしい。(平田雄介)