【ワシントン=大内清】投票まで1週間を切った米大統領選で、米自治領プエルトリコ出身者の動向がにわかに注目されている。共和党候補のトランプ前大統領(78)が27日に開いた支持者集会で、スピーカーの一人がプエルトリコを「ごみの島」と侮辱したことへの反発が拡大。東部ペンシルベニアなどの接戦州でプエルトリコ系が民主党候補のハリス副大統領(60)への支持に傾けば、勝敗に大きく影響する可能性がある。
発言の主は、集会で登壇したトランプ支持者のコメディアン、トニー・ヒンチクリフ氏。「文字通り海に浮かぶごみの島があるのを知ってる? プエルトリコっていうんだけど」と述べた。
カリブ海北東部のプエルトリコは、1898年の米西戦争後にスペインから米国に割譲された群島で、住民は米市民権を持つ。州ではないためプエルトリコで大統領選の投票は行われないが、米本土には推計約580万人のプエルトリコ系が暮らす。ヒスパニック(中南米系)としてはメキシコ系に次ぎ2番目の人口規模だ。勝敗を分ける接戦7州では、ペンシルベニアに約48万人が住むなど一定の存在感を持つ。
ヒンチクリフ氏の発言に対し、人気歌手のジェニファー・ロペスさんやリッキー・マーティンさんらプエルトリコ系の著名人が相次いでトランプ氏への反対やハリス氏支持を表明。米メディアによると、プエルトリコ系コミュニティーには、親族や知人らにハリス氏への投票を呼びかける運動が広がっているという。
また集会でヒンチクリフ氏は、ヒスパニック全体や黒人、ユダヤ系などのマイノリティ(少数派)を侮辱する「ジョーク」も飛ばした。
トランプ陣営は「これらのジョークはトランプ氏の考えではない」と釈明に躍起だ。ただ、トランプ氏は、ヒンチクリフ氏の発言後の演説でこの問題に言及しなかったことでもプエルトリコ系から批判を浴びている。
ハリス氏は、トランプ氏の集会と同じ27日、本土に比べて遅れているプエルトリコのインフラ整備や雇用創出に向けた政策を発表。勝敗を左右する層としてプエルトリコ系に照準を合わせた矢先にトランプ氏側から思わぬ〝援護射撃〟を得た格好だ。