トランプ米大統領の20日の就任直後、米国で難民申請用のスマホアプリが突然ダウンしたことがわかった。アプリは難民(亡命)申請するための入国予約用で、バイデン前政権が導入した。南部国境のメキシコ側で入国を待つ人々は突然予約を取り消され、途方に暮れた。トランプ政権の公約である不法移民対策の一環とみられる。
国境の橋の上で途方に
トランプ氏が首都ワシントンの連邦議会議事堂で第47代大統領に就任した直後。約3000キロ離れた南部国境のメキシコ側の町で、入国を待つ人々のスマホにメッセージが現れた。
「CBPワンを通じた予約は無効になりました」
米税関・国境警備局(CBP)で難民申請の予約を取るためのアプリ「CBPワン」がダウンし、予約が取り消されたことを告げていた。同局による意図的なものとみられる。
南米コロンビアから来て無効になった女性は、国境にかかる橋の上で号泣し、「ここまで来たのに、すべてが崩れ落ちた」。
同アプリはバイデン政権が2023年1月から運用し、これまでに約90万人が入国したという。だが、トランプ政権はこうした難民申請のための合法入国者も「出稼ぎ移民」の可能性があるとして、厳しい姿勢で臨んでいるとみられる。
「聖域都市」も摘発迅速化
一方、米国土安全保障省は21日、「迅速な強制送還の対象となる外国人の指定」と題する通知を発令。米東部時間21日午後6時(日本時間22日午前8時)に発効した。
通知は、外国人が何らかの事案で逮捕された際、米国内に2年以上滞在していることを証明できない場合、裁判手続きをへることなく迅速に強制送還できるという内容。ニューヨーク・タイムズ紙によると、こうした強力な権限は長年、主に南部国境付近に限られてきたが、今回の通知で全米に拡大されたという。
欧米メディアによると、同省移民・税関捜査局(ICE)はシカゴやニューヨークなど、移民に寛容な大都市で不法移民の摘発を始めるとされ、今回の通知はこうした不法移民の「聖域都市」での摘発を迅速化するための措置とみられる。
政権移行へ周到準備
米国の不法移民数は1100万人以上とされる。バイデン政権下で寛容な移民政策を見込んだ不法移民が中南米から押し寄せたためだ。これは総人口3億3650万人の3・3%に当たる。
トランプ氏は、多くの不法移民が滞在するとされる聖域都市について「移民の犯罪者をかくまっている」と非難。ほかにも、米国に難民申請した移民を隣国メキシコで待機させる制度を復活させるなど、対策は広範囲に及んでいる。
トランプ氏は就任初日から、こうした措置を可能にする大統領令を連発。8年前の1期目就任直後の大統領令は数本だったが、2期目は初日だけで25本以上にのぼっており、政権移行に向け周到な準備を重ねていたことがうかがわれる。
米国内の移民人権団体は、こうした動きが移民たちを怖がらせているとして新政権を非難している。