【ワシントン=坂本一之】バイデン米大統領は16日の中国の習近平国家主席との会談で、一時中断した軍同士の対話が再開し、両政府間の意思疎通が維持されていることを歓迎した。ただ、米中の軍事衝突回避に向けて対話維持に注力するが、東・南シナ海で覇権拡大を図る中国を押さえ込めていない。一方で中国との貿易戦争もいとわないトランプ次期米大統領は、対中強硬姿勢を示し圧力をかけ始めている。
「複数レベルで定期的に話し合うようになっている」。バイデン氏は会談で軍同士の対話が進んでいることを評価した。
国防当局・軍高官の対話は2022年8月のペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問や、23年2月に米領空に侵入した中国の偵察気球を米軍が撃墜したことなどを受けて中断。同年11月の米中首脳会談でバイデン氏が再開を呼び掛け、合意していた。
偶発的な軍事衝突の回避に向けた対話が進む一方で、中国は南シナ海で米国の同盟国であるフィリピンの船舶に対し危険な妨害行為を続けるなど緊張を高めている。
バイデン政権は、米国によるフィリピンの防衛義務を定めた米比相互防衛条約の適用をかざして自制を促すが、習政権は高圧的な海洋進出を続け、統一を掲げる台湾の周辺でも軍事活動を拡大させている。
大統領1期目に報復関税で中国と貿易戦争を繰り広げたトランプ氏は今回の大統領選を通し、中国が台湾に侵攻すれば「150から200%」の関税を課す考えを示すなどして牽制(けんせい)。習氏との良好な関係をアピールしつつ、予測できない対応を自身がとる可能性をにおわせるなど、早くもディール(取引)外交の様相を呈している。