【ワシントン=大内清】第2次トランプ米政権は22日、公約とする不法移民の大量送還に向けた動きを本格化させた。米紙ワシントン・ポスト(電子版)によると、連邦捜査局(FBI)などを統括するボベ司法副長官代行は検察官らに向けた文書で、不法移民の所在を特定する捜査の強化を指示。州や郡などの地方政府が協力しない場合は訴追も辞さないと警告した。
司法省の動きは、トランプ氏が就任初日に署名した大統領令で、不法移民の摘発強化を指示したことを受けたもの。野党・民主党が優勢な州や都市の反発は必至で、政治的分断の深刻化は避けられない状況だ。
ボベ氏は21日に送付した文書で、地方政府には「敵性外国人法」などに基づき司法省からの移民関連の指示に従う義務があるとし、拒めば訴追対象になると指摘した。1798年に制定された戦時法の同法は、第二次大戦中の日系人強制収容の根拠にもなった。
司法省は、民主党が優勢な中西部シカゴや東部ニューヨークなど不法移民に寛容な「聖域都市」への対応に特化した部門を新設し、圧力を強める構えもみせる。すでにシカゴなどは、不法移民の大量送還で主導的な役割を果たすとみられる移民・税関捜査局(ICE)への協力は「限定的」なものになるとしており、今後は司法省との対立も深まりそうだ。
不法移民問題を巡っては22日、国境警備強化のために米兵約1500人をメキシコ国境へ派遣する準備を進めていることも判明。活用可能な省庁や法令を総動員しての対策が進む。
共和党が多数派を占める下院も同日、政権の取り組みを後押しするため、強制送還の対象となる不法移民による犯罪行為の範囲を拡大する法案を賛成多数で可決した。同法案はすでに上院を通過しているため、大統領の署名で成立。トランプ氏はこれにより、強硬な不法移民対策を加速させることが可能になる。
一方、同法案の採決では、不法移民の増加に対する国民の不満を背景に、民主党議員の一部が賛成に回るなど同党内での足並みの乱れも露呈した。民主党はトランプ氏への対決姿勢を強めつつも、対抗手段を打ち出せずにいるのが現実だ。