【ワシントン=大内清】トランプ次期米大統領は2日、自身が就任宣誓を行う来年1月20日までにパレスチナ自治区ガザを巡る戦闘でイスラム原理主義組織ハマスに拘束されている人質が解放されなければ「中東で恐ろしいことが起きる」と警告した。トランプ氏はガザ情勢が政権運営の足を引っ張ることを懸念しており、人質解放を含む停戦交渉の前進に向けて圧力を強めた格好だ。
トランプ氏は交流サイト(SNS)への投稿で、昨年10月のハマスによるイスラエルの奇襲攻撃と人質の連れ去りに関与した者に「米国の長い歴史の中で最も強力な打撃」を加えると強調し、「今すぐに人質を解放しろ!」と迫った。
一方、これに先立つ11月30日、ハマスは人質のイスラエル系米国人男性の動画を公開。男性はトランプ氏に「私たちの解放のために米国の影響力を行使してほしい」と述べた。ハマスには、米世論に働きかけてトランプ氏の関与を引き出す狙いがあるとみられる。
ハマスは、昨年10月のイスラエル攻撃で約1200人を殺害し250人以上を誘拐した。うち105人は昨年11月、イスラエルで拘束中のパレスチナ人240人の身柄と引き換えに解放されたが、ハマスは残る人質のうち少なくとも33人は同国軍の攻撃で死亡したと主張。現在は米国籍保有者7人を含む約100人がガザに残されているとされる。ガザ保健当局によると、これまでにガザの戦闘でパレスチナ人4万4000人超が死亡した。
バイデン政権は、エジプトやカタールとともに、イスラエルとハマスの停戦を仲介しているが、ここのところは交渉が停滞。イスラエルのネタニヤフ政権はハマスを根絶するまでガザ攻撃を継続するとの強硬姿勢を崩していない。