トランプ米大統領はカナダなど3カ国への関税発動を巡り、安全保障への脅威を理由として大統領に幅広い対応権限を与える「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を法的根拠とした。2017~21年の第1次トランプ政権では、数カ月以上の手続き期間を要する通商関連法を用いたが、今回は直ちに実施できる大統領権限を用いた。
第1次政権では、貿易相手が不公正な取引条件で貿易を行っている場合に援用する通商法301条を、中国などへの追加関税発動の根拠とした。
安保上の脅威を理由とする通商拡大法232条も多用した。鉄鋼・アルミニウムや自動車が米国市場へ大量流入し、安保リスクがあるとして、日本やカナダなどに矛先を向け、市場開放などの対応を迫った。
IEEPAを根拠とした場合、大統領は緊急事態を宣言し、外国企業による米資産の取得阻止などの対応策をとることができる。米メディアによると、IEEPAを根拠に関税を引き上げるのは初めて。バイデン前政権はIEEPAを使い、日本製鉄によるUSスチール買収阻止を決めた。
通商法301条などの通商関連法は、相手国の取引実態を調査・分析したり、産業界などへ意見聴取したりして時間がかかる。IEEPAは、そうした厳格な要件、手続き抜きで実施できるが、監視の目が届きにくいとして議会などから反発が出る恐れがある。(塩原永久)