【ワシントン=塩原永久】バイデン米政権は10日、ウクライナを侵略しているロシアへの追加制裁を発表した。ロシアが原油輸出で制裁逃れに使っている「影の船団」と呼ばれる輸送船を対象とするなど、ロシアの戦費調達につながる原油取引に打撃を与える狙い。トランプ政権への移行を前に対露圧力を強化する。
米財務省によると、制裁対象に「影の船団」の露船籍やバルバドス船籍のタンカーなど183隻を指定。露国営会社ガスプロム・ネフチと関連会社、燃料生産・輸出に関わる政府高官らにも制裁を科すという。
ロシアは米欧による対露制裁を回避するために、闇取引に携わる輸送船団を使ってきた。米政府高官は追加制裁により「露政府は戦時経済を支えることが一段と困難になる」と報道陣に話した。
対露制裁を巡っては、米財務省が昨年11月、露ガス大手ガスプロム系列のガスプロムバンクを含む複数の金融機関の取引を制限する金融制裁を発表していた。
これまで日米欧が露産エネルギーを対象として実施した制裁は、市場の供給量が減少し、原油相場を押し上げてしまう恐れがあった。最近は相場が落ち着き、追加制裁を可能とする市場環境が整ったという側面もある。