【ワシントン=平田雄介】5日の米大統領選に合わせて、10州が人工妊娠中絶の規制に関する住民投票を実施する。大統領選の激戦地である西部アリゾナ州とネバダ州も含まれる。中絶問題に関心の高い有権者の投票率を押し上げる可能性があり、大統領選への影響が注目されている。
大統領選で民主党候補のハリス副大統領(60)は「全米で中絶の権利を保証する連邦法の整備」を公約に掲げた。共和党候補のトランプ前大統領(78)は妊娠後期の中絶に反対する一方、法規制は「各州に委ねる」としている。
中絶問題で支持率が高いのはハリス氏だ。非営利団体カイザー・ファミリー財団(KFF)の8~9月の世論調査でハリス氏53%に対し、トランプ氏は34%に止まった。
同種の住民投票は、連邦最高裁が判例を覆して以降、7州が行い、全て中絶擁護派が勝利。保守派判事の任用を進め、最高裁判断を覆す契機を作ったトランプ氏の中絶問題での不人気は、22年秋の中間選挙で共和党が伸び悩む一因となった。民主党には今回も、中絶擁護派が積極的に住民投票に出向くことで、大統領選でのハリス氏の得票が増えるとの期待がある。
アリゾナとネバダの有権者の2割を占める中南米系は、経済や移民問題への関心が高いとされるものの、トランプ氏とハリス氏の支持率が拮抗する中、わずかな票の動きも勝敗を左右しかねない。