【ワシントン=坂本一之】サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は10日、産経新聞など一部メディアと会見し、核・ミサイル開発を進める北朝鮮について「深刻な脅威だ」と述べ、ロシアとの協力深化に関してトランプ次期政権と協議したと明らかにした。バイデン大統領が阻止命令を出した日本製鉄の米鉄鋼大手USスチール買収に関し、「米国における鉄鋼の長期的な供給と生産の保証に疑問を投げかける」と説明した一方で、買収阻止の判断が日米関係に影響を与えることはないとの認識を示した。
サリバン氏はバイデン政権で外交・安保政策の中核を担ってきた。北朝鮮を巡っては、韓国の政治的混乱を利用する「リスクがある」とも述べ、バイデン政権で進めた日米韓連携が後退すれば「北朝鮮や中国への抑止力が弱まる」と警告した。
クリントン政権(1993~2001年)以降、米国の歴代政権は北朝鮮問題に取り組んでいるが、「朝鮮半島の非核化は明らかに実質的な進展がみられていない」と述べ、弾道ミサイル技術の向上などを念頭に「間違った方向へ進み続けている」と懸念を示した。
近年は民主主義陣営に敵対する北朝鮮やロシア、中国、イランが「より広範囲に連携している」と指摘。北朝鮮がウクライナ侵略を続けるロシアに派兵しウクライナ軍と交戦していることも踏まえ、トランプ次期政権も露朝協力の問題に「取り組まなければならない」と語った。
露朝の動きに関しては、次期政権で後任の大統領補佐官(国家安保問題担当)となるウォルツ下院議員(共和党)と議論したとも明かした。
ウォルツ氏が中国などによるサイバー攻撃への対処を強化していく考えを示していることに賛同し、サイバー問題は「米国や同盟国にとって深刻な問題だ」と強調した。
石破茂政権が中国との対話を深めようとしていることを巡っては、日本とは情報共有を通じ「透明性と信頼関係を築いていて懸念はない」と述べた。石破政権がトランプ次期政権とも情報共有を図り、中国問題に関する「外交や抑止力」で緊密に連携していくことに期待を示した。
また、バイデン政権が日鉄のUSスチール買収を阻止する判断を下したものの、「日米関係はここ数十年で最も強固だ」とし、良好な関係を維持できるとの考えを示した。