米国で秋から冬のメジャースポーツといえば、アメリカン・フットボールである。以前は敬遠していたが、面白さに気付いてからはプロ(NFL)だけでなく大学リーグの試合まで観戦するようになった。
むくつけき選手たちがぶつかり合う〝暴〟と、プレーごとに布陣や戦術を変えて相手を出し抜いていく〝知〟が一体となっているのが魅力だ。
監督を頂点に、作戦を具申する参謀らがおり、フィールド内ではクオーターバックが現場指揮官として他の選手たちを動かしていく。チームとして機能するには、規律とコミュニケーションが必要だ。軍最高司令官である大統領をはじめ、あらゆる立場でリーダーシップが重視される米社会の縮図のように感じる。
私が1990年代に中学時代を過ごした中西部オハイオ州はアメフトが盛んで、友達と遊びでプレーすることも多かったのだが、あまり好きにはなれなかった。痛いからというだけでない。当時のNFLで司令塔のクオーターバックは白人ばかりだったように、暗黙の階層があるように感じられたからだ。
ところが、それから30年後の現在はプロチームの半数近くで黒人が先発クオーターバックを務め、リーグを大いに盛り上げている。そんな変化もまた、米国の縮図だろう。(大内清)