次期米副大統領となるJ・Dバンス上院議員(40)は、苦学の末に名門大法科大学院を修了し、政界に転じた「アメリカン・ドリーム」の体現者だ。6日未明、南部フロリダ州での支援者パーティーで、「あなた方と子供たちの夢のために戦い続ける」と述べ、産業空洞化でかつての繁栄が失われた「ラストベルト(さびた工業地帯)」復活へ決意を新たにした。
バンス氏は、中西部オハイオ州の貧困家庭で育ち、高校卒業後に海兵隊員としてイラク戦争に従軍した。奨学金を得てオハイオ州立大に進学。名門エール大法科大学院を経て、西部カリフォルニア州シリコンバレーの投資会社などに勤務した。
2016年に出版した自叙伝『ヒルビリー・エレジー』(日本語版は光文社刊)が、ベストセラーに。薬物依存に苦しむ母親の逸話を交えながらラストベルトの苦境を描き、地方の白人労働者が都会のエリート政治家に対して抱く怒りや不信感を理解する手がかりを提供したと評されている。
トランプ氏には批判的だったが、立場を一転させ、22年の中間選挙でトランプ氏の支持を獲得し地元オハイオ州の上院議員に当選。同世代のトランプ氏の長男、ジュニア氏(46)の後押しがあったとされ、今年7月の共和党全国大会で副大統領候補に指名された。
選挙戦では、過剰な自由貿易を批判し、労働者保護を唱えた。不法移民や薬物の蔓延(まんえん)、国民を苦しめるインフラへの対処を優先課題とし、「米国の利益が第一」と唱えた。
インド系の妻、ウシャさん(38)とは法科大学院で出会い、子供3人を育てている。(ワシントン 平田雄介)