【ワシントン=坂本一之、大内清】5日の米大統領選で、共和党候補のトランプ前大統領(78)が選挙人の獲得数だけでなく、総得票数でも民主党候補のハリス副大統領(60)を大きく上回ったことに同党では衝撃が広がっている。出口調査によると、物価高が続いた経済に対する不満や、ヒスパニック(中南米系)有権者の支持拡大などがトランプ氏の勝因となったことが明らかになった。
歴史的物価高で票流れる
CNNテレビやNBCニュースなどが公表した出口調査では、米経済が「あまり良くない」「悪い」の回答が計68%に達し、そのうち7割の人がトランプ氏に投票した。
また、インフレに「苦しんだ」と答えた人が7割を超え、その内訳をみると「非常に苦しんだ」とする22%のうち74%の人がトランプ氏に投票。「ある程度苦しんだ」と答えた53%のうち51%がトランプ氏に票を投じている。
歴史的な物価高に見舞われた有権者の票がトランプ氏に流れた形だ。トランプ氏が選挙戦で物価高問題を巡り、現政権のバイデン大統領(81)とハリス氏の責任を繰り返し追及してきた効果ともいえる。
支持基盤揺らいだ民主党
ハリス氏は、重要施策として掲げた人工妊娠中絶の権利擁護で高い支持を得た。その一方、出口調査では、大統領の特性として「指導力」を最も重要視した人のうち、ハリス氏に投票した人は33%にとどまり、ハリス氏のリーダーシップに対する期待は高くなかったとみられる。
さらに、ハリス氏は女性票で20年の前回大統領選のバイデン氏をやや上回るか同程度を獲得したものの、男性票は数ポイント下落。黒人やヒスパニック、アジア系の得票は軒並み低下した。
もともと民主党は高学歴でリベラルな白人や人種的マイノリティー(少数派)を支持基盤としてきた。しかし今回はそれが盤石ではないことが露呈した格好だ。
ヒスパニック系底上げに成功
反対に、ヒスパニック有権者に占めるトランプ氏の得票率は前回大統領選の32%から14ポイント増加。ヒスパニック男性に限っては得票率が55%と、ハリス氏よりも多くの支持を集めた。
16年、20年の大統領選では民主党候補がトランプ氏の得票率を大きく上回っており、トランプ氏が今回、ヒスパニックの票を伸ばしたことが大統領選の勝利に貢献したと指摘されている。
トランプ氏は大統領への返り咲きを目指し、ヒスパニック有権者の底上げに力を入れてきた。移民として米国に渡り市民権を得たヒスパニック有権者が、自分たちの労働の機会を奪う不法移民を問題視する声に耳を傾け、集会を積極的に開くなどしてきた取り組みが功を奏した。
一方、CNNによると、ハリス氏の陣営関係者からは「バイデン氏が早期に選挙戦から撤退していれば、ハリス氏の政策や人柄をもっと有権者に浸透させられた」との〝バイデン氏責任論〟も出ている。