【ワシントン=坂本一之】米大統領選で勝利宣言したトランプ前大統領は、再選した場合にバイデン政権の政策を覆すだけでなく、プーチン露大統領や中国の習近平国家主席らとディール(取引)することに意欲を示してきた。地域情勢や世界経済を巡る不透明感が増す可能性がある。
戦争終結を重視
トランプ氏はロシアのウクライナ侵略に関し、就任前にプーチン氏らとの交渉などを通じて「戦争を終わらせる」考えを強調。バイデン政権が日欧などと行ってきたウクライナ支援より、戦争終結を重視している。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記への対応では「私が(ホワイトハウスに)戻れば、彼とうまくやる」と述べ、1期目に直接会談したという自信をのぞかせる。「彼も私の復帰を望んでいる」と語り、ディールへの秋波を送っている。
中国に対しては、台湾に侵攻すれば「150~200%」の関税を課すと米紙に述べている。これもディールの一環とみられる。台湾有事の際に軍事力を行使する可能性を問われ、「必要ないだろう。習氏は私を尊敬し、私が何をしでかすか分からないことも知っている」と説明。米国の軍事力をちらつかせて台湾侵攻を牽制した。
中国製品には60%の高関税も
中国製品にも60%の高関税を課す考えを示すなど強気の姿勢だ。実際、大統領1期目は対中貿易赤字を問題視して中国製品へ制裁関税を発動し、貿易戦争を繰り広げた。
米製造業を活性化させるため、各国からの輸入品に10~20%の関税を課すともしている。日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画には強く反対し、買収阻止に動く可能性がある。
バイデン政権が主導した新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」を破棄する意向も示している。1期目には就任前に掲げていた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の離脱を就任直後に実行した。IPEF破棄は有言実行を再び国内外に示すことができる政策だ。