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USスチール買収計画 日鉄が米政府に書簡 安保リスク払拭へ協定提案 ロイター報道

産経ニュース 2024年9月6日 16時38分

【ワシントン=渡辺浩生】ロイター通信は5日、米鉄鋼大手USスチールの買収を計画している日本製鉄が米政府に書簡を送り、国家安全保障上のリスクに対処する協定の締結を提案したと報じた。買収を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)は日鉄側に、米国内の重要事業を支える鉄鋼供給に悪影響を及ぼすリスクを伝えたとされ、日鉄側が懸念払拭を試みたとみられる。

欧米メディアによると、CFIUSの勧告に基づきバイデン大統領は買収を阻止するための行政命令を出す方向で最終調整している。11月の大統領選で民主党候補のハリス副大統領が激戦州の労働者票を取り込むことを狙った「政治的決断」との指摘がある。

ロイターによると、日鉄はCFIUSへの書簡で、USスチールの設備を維持・増強させる投資を通じて「米国における鉄鋼生産能力を維持し、潜在的に増加させる」と表明。USスチールの生産能力や雇用を米国外に移転しないと約束した。

さらに、買収で「緊密な日米関係を基盤に、中国に対してより強力な世界規模のライバル企業をつくる」とも強調した。

2022年のデータによると、中国は世界の粗鋼生産の54%を占める最大輸出国。バイデン政権は「唯一の競争相手」とする中国に対抗するためインド太平洋の同盟国などと供給網構築を含む協力強化を目指してきた。日鉄側は安保上の懸念を払拭するため、買収が対中競争に資するとの主張を試みた可能性がある。

ロイターによると、これに先立ちCFIUSは日鉄側に書簡を送り、買収が「米国内の鉄鋼生産能力の削減につながる」可能性を指摘し、重要産業やインフラに必要な鉄鋼の安定供給を害するリスクを重視する姿勢を明らかにした。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のジョンストン日本部長は米紙ニューヨーク・タイムズに対し、買収阻止について「中国との経済競争を進めるため、同志国との連携構築を重視するバイデン政権の既定方針を踏みにじるものだ」と指摘した。

一方、ハリス氏は5日、東部ペンシルベニア州のピッツバーグ入り。数日滞在する予定。USスチールの本社があり、ハリス氏は2日にもピッツバーグを訪れ、演説で買収に慎重姿勢を示したばかり。

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