【ワシントン=大内清】米首都ワシントン近郊で起きた小型旅客機と米軍ヘリの衝突・墜落事故で、トランプ大統領は30日、ホワイトハウスで記者会見し、航空輸送事業を監督する連邦航空局(FAA)が少数派に配慮した雇用を進めたことが管制能力の低下につながったと主張した。またトランプ氏は「悲しいことに生存者はいない」と述べ、旅客機とヘリの乗客・乗員67人全員が死亡したとの見方を示した。
墜落現場のポトマック川では同日、遺体の捜索や、フライトレコーダー(飛行記録装置)や機体の残骸の回収に向けた作業が続いた。
会見でトランプ氏は「何が墜落につながったのかは分からないが、とても強力な意見と考えはある」とした上で、「FAAは知的障害者や身体障害者らを積極的に雇用していた。考えられないことだ。頭が良い天才にしかできない仕事なのに」などと主張。少数派の活躍の場を増やすことで社会の活性化を目指す「多様性・公平性・包括性(DEI)」を推進したバイデン前政権やオバマ元政権を非難した。
トランプ氏は同日、運輸省とFAAに対し、職員の採用基準を見直すよう指示する文書に署名した。トランプ氏は、DEIを推進する取り組みの排除を掲げており、今回の事故をそのために利用する狙いがあるとみられる。
これに対し事故原因を調査する運輸安全委員会(NTSB)の幹部は同日の記者会見で、「調査は事実に基づいて行う。(事故原因について)何らの推測もしない」と述べるにとどめた。
またトランプ氏は、FAA副局長にクリストファー・ロシェロ氏を任命。上院の人事承認が必要な局長ポストは空席のため、同氏が局長代理として航空行政の司令塔となる。