【ワシントン=大内清】米共和党のトランプ次期米大統領は12日、駐イスラエル大使に同党のマイク・ハッカビー元アーカンソー州知事(69)を指名すると交流サイト(SNS)で発表した。ハッカビー氏はキリスト教福音派の牧師から政界に転身した親イスラエル派の急先鋒(せんぽう)。次期政権の中東外交は、トランプ氏が第1次政権でとったのと同等以上にイスラエル寄りとなる可能性が高い。
またトランプ氏は同日、中東問題担当特使に不動産投資家のスティーブン・ウィトコフ氏を起用することも発表した。
ハッカビー氏は、世界各地に離散したユダヤ人がイスラエルに再結集することがキリスト再臨につながるとの信仰から、同国の利益を熱烈に擁護してきた人物。こうした立場は「キリスト教シオニズム」と呼ばれ、トランプ氏が支持基盤とする福音派に広く受け入れられている。
トランプ氏は第1次政権で、イスラエルの主張通りにエルサレムを同国の首都と認定。イスラエルが占領地・東エルサレムやヨルダン川西岸で拡大させるユダヤ人入植地を同国領に併合することも支持する姿勢を示した。ハッカビー氏が大使に就任すれば、こうした流れをさらに推し進めようとするのは確実だ。
第1次トランプ政権は、イラン包囲網の一環として、イスラエルと一部のアラブ諸国による国交正常化の仲介も進めた。だが、昨年10月以降のパレスチナ自治区ガザを巡る戦闘でガザ住民に多大な犠牲が出ていることを受けてアラブ諸国は態度を硬化させている。トランプ氏が次期政権でもあからさまな親イスラエル姿勢をとれば、アラブ世界での反米世論が強まるのは避けられない。
11日にサウジアラビアの首都リヤドで開催されたアラブ・イスラム諸国臨時首脳会議は、イスラエルによるガザやレバノンへの攻撃を強く非難するとともに、西岸などでの入植者による暴力停止や占領の終結を求める声明を採択した。
ハッカビー氏は、第1次トランプ政権で大統領報道官を務めたサラ・サンダース現アーカンソー州知事の父。2008年と16年の大統領選で共和党の候補者指名争いに参戦したこともある。