【ワシントン=坂本一之】米国防総省ミサイル防衛局は10日、軍事覇権の拡大を図る中国と対峙(たいじ)する米軍の重要拠点、米領グアムの防衛に向けた弾道ミサイルの迎撃実験に初めて成功したと発表した。中国や北朝鮮がミサイル攻撃力を高める中、米国防総省のシン副報道官は11日の記者会見で、迎撃実験について「グアム防衛の重要な一歩だ」と強調した。
ミサイル防衛局はインド太平洋軍などと協力し、グアムのアンダーセン空軍基地周辺で迎撃実験を実施。新型レーダー「AN/TPY6」で空中から発射された中距離弾道ミサイルの標的を探知・追尾し、垂直発射機から迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を発射し、沖合で撃墜した。
実験で得られたデータはグアムに導入する新たなミサイル防衛システムの構築などに活用する。
新たなミサイル防衛システムは、島のグアムを守るため360度全方位に対処できる能力を備え、あらゆる方向から飛来するミサイルや航空機を迎撃する。
国防総省と米軍がグアムの防衛強化を急ぐのは、中国が「グアムキラー」と呼ばれる射程約4000キロの中距離弾道ミサイル「東風(DF)26」を配備し脅威を高めていることがある。DF26は核弾頭と通常弾頭の双方を搭載でき、グアムを射程に収める。
北朝鮮も、迎撃が難しいとされる変則軌道の飛行が可能な弾道ミサイル開発を進めており、ミサイル防衛の強化が米側の課題となっていた。
グアムは日本の防衛や台湾有事に加え、北朝鮮やロシアへの対応でも米軍の拠点となる。グアムに展開する米軍を守る防空システムを構築することで、中朝露への抑止力を高める。