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マスク氏「DOGE」が猛威 援助機関を封鎖、連邦予算システム掌握「まるでクーデター」

産経ニュース 2025年2月4日 19時20分

【ワシントン=大内清】トランプ米政権で新設された外部組織「政府効率化省(DOGE)」を率いる実業家イーロン・マスク氏が、トランプ大統領の信任を受けて政府機関・職員の粛清を進めている。3日には国務省傘下の対外援助機関「国際開発局(USAID)」の解体に向け本部ビルを封鎖。連邦予算をつかさどる財務省のシステムなども掌握し、急スピードで政府を作り替えつつある。

「USAIDは虫の固まりだ。廃棄するしかない」。マスク氏は3日、自身が所有するX(旧ツイッター)上の音声配信でこう語った。前日には根拠を示さずに同局を「犯罪組織」だと決めつけた。

トランプ氏は後押し

こうした発言に呼応する形でトランプ氏は3日、USAIDは「過激な異常者たちが運営している」と述べてマスク氏を後押し。首都ワシントンの本部ビルは封鎖され、多くの職員は自宅待機を命じられた。政権高官は米メディアに、USAIDを国務省の一部門に縮小・再編する案が検討されていると語った。

USAIDはケネディ政権下の1961年に「対外援助法」に基づいて設立された機関で、現在は1万人超の職員がアフリカや中東、アジア、中南米、東欧の途上国などで開発支援や災害支援に当たる。米国の影響力を高めるとともに、米主導の国際秩序の安定化を図る役割を担ってきた。2023会計年度(22年10月~23年9月)の予算は400億ドル(約6兆2千億円)超で連邦予算全体の1%未満とされる。

職員の一部が抗議デモ

議会承認なしにUSAIDを実質的に解体するのは違法との見方が強く、法廷闘争は必至だ。だが、トランプ氏やマスク氏は支持者からの人気を背景に強気の姿勢を崩さない。

米メディアによるとマスク氏のチームは3日までに、人事管理局(OPM)が持つ連邦職員ら数百万人分のデータベースや、財務省が管理する連邦政府の給与システムなどへのアクセス権を確保。トランプ政権の方針に合致しないプロジェクトや部署、職員らの洗い出しを進める構えだ。

ロイター通信によると、政府職員らの労働組合は3日、マスク氏らに給与システムへのアクセスを認めたのは違法だとして財務省とベセント財務長官を提訴した。USAIDやOPMの周辺などでは、締め出された職員らの一部が抗議デモを行い、法的立場があいまいなマスク氏やDOGEの強引な手法を批判。参加者の一人は米メディアに「まるでクーデターだ」と語った。

マスク氏の権限不透明

DOGEはトランプ氏が1月20日の就任直後に署名した大統領令で既存のIT関連部署を改組する形で設置された。ホワイトハウスに隣接する行政府ビルにオフィスを持つが、権限範囲の根拠となる法律は議会で成立していない。スタッフの多くはマスク氏が経営する宇宙開発企業「スペースX」のオフィスで勤務しているとの報道もある。

レビット大統領報道官は3日、マスク氏は「特別政府職員」の資格を有し、政府での活動に問題はないとの認識を示した。ただ、特別政府職員は年間130日を超えて働いてはならないなどの規定があるほか、マスク氏に認められた情報へのアクセス権限の範囲など不透明な点も多い。

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