【ワシントン=大内清】トランプ米大統領は30日、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの停戦が続くパレスチナ自治区ガザの情勢を巡り、エジプトとヨルダンがガザ住民の移住を受け入れるべきだとの考えを改めて示した。両国は住民をガザ外へ移住させる案をすでに否定しているが、トランプ氏は両国への外交圧力を強めていく構えだ。
トランプ氏はホワイトハウスで記者団に、エジプトとヨルダンに対して「多くのことをしてやる。そして彼らは(移住受け入れを)やることになる」と語り、両国とのディール(取引)に自信をみせた。
トランプ氏は25日、イスラエル軍の攻撃で破壊されたガザは「まるで解体現場」と形容し、住民は「より安全に暮らせる場所」へ移すべきだと主張。移住先としてガザに隣接するエジプトと、パレスチナ難民の最大の受け入れ国であるヨルダンを挙げた。エジプトのシーシー大統領とヨルダンのアブドラ国王はこの案に反対を表明している。
米国などの仲介で19日に発効した停戦合意は、ハマスに拘束された人質の解放とイスラエルで収監されているパレスチナ人の釈放などを柱とする第1段階の後、イスラエル軍のガザ撤退を含む第2段階に進むとしている。
しかし、イスラエルのネタニヤフ連立政権に参加する極右政党などは戦闘継続を主張。住民を域外に移住させてガザを再占領するべきだとの声も大きい。
これに対しパレスチナ自治区やアラブ諸国では、住民の強制移住と再占領は、将来のパレスチナ国家の領土的基盤とパレスチナ人の民族的アイデンティティーを奪おうとするものだとの反発が強い。
停戦合意が順調に第2段階に進むか見通せない中、住民移住案にこだわるトランプ氏の姿勢はイスラエルの右派勢力を勢いづかせる可能性がある。