【ワシントン=本間英士】20日のトランプ次期米大統領の就任式を巡り、実業家のイーロン・マスク氏(53)の動向が注目されている。歳出削減を主導する新組織「政府効率化省」の責任者に指名されるなど、新政権のキーパーソンの1人として見なされ、就任式にも出席予定のマスク氏。強力な発信力を持つ一方、行動の読めなさなどから新政権の火種となり得る危うさも秘める。
「私たちは多くの変化を起こすことを楽しみにしている。この勝利は始まりに過ぎない」
首都ワシントンで19日に開かれたトランプ氏の支持者集会で、マスク氏はこう強調した。
X(旧ツイッター)で2億超のフォロワーを持つマスク氏。「政府の無駄遣いを大胆に削るべきだ」との姿勢がトランプ氏支持者から広く共感を呼んだ。トランプ氏以上の影響力を示す場面もあり、インターネット上では「マスク共同大統領」との異名も。中国政府と良好な関係を築いており、パイプ役としての期待もある。
一方で、先読みできない行動や過激な言動が新政権の不協和音を招く可能性もある。昨年12月にドイツのショルツ首相を「無能なバカ」と呼ぶなど、欧州の一部指導者を激しく攻撃し関係悪化を招いた。中国との利害関係の深さから、対中政策を巡り政権の足並みが乱れる局面も想定される。
マスク氏は昨年の米大統領選で、最激戦州の東部ペンシルベニア州で巨額の献金を実施するなどトランプ氏の返り咲きを支えた。同氏の勝利後、マスク氏が率いる米電気自動車(EV)大手テスラの株価は急上昇。他のIT大手トップもトランプ氏に急接近し、就任式にはアマゾン・コムの創業者、ベゾス氏やメタのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)も出席予定だ。