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米国も抱える機密管理の課題 州兵が文書拡散、「管理官」や監視部署設立の対策も

産経ニュース 2024年7月12日 17時11分

【ワシントン=坂本一之】機密情報へのアクセスを有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス」など国家の機密情報を管理する取り組みで先行する米国でも、情報漏洩(ろうえい)は大きな課題となっている。ロシアのウクライナ侵略を巡りさまざまな情報収集を進めていた2023年4月、機密文書を交流サイト(SNS)で拡散させた米空軍州兵が逮捕され、情報管理体制の不備を露呈した。

州兵は「最高機密」「機密」などに指定された文書を不当に持ち出しSNSで拡散させたとして、スパイ防止法違反などの罪で昨年6月に起訴された。漏洩した情報には、ウクライナ情勢の分析や同盟国高官のやり取りを傍受したとみられる内容などがあった。

19年に入隊した州兵は逮捕当時21歳で階級も高くなかったが、IT技術者としてと働き、21年に最高機密を扱うセキュリティー・クリアランスの資格を得ていた。

国防総省は再発防止策として「最高機密管理官」のポスト新設や、職員による機密文書へのアクセスを監視する部署の立ち上げを発表。機微な情報が集まる施設に電子機器が持ち込まれないよう管理の徹底も掲げた。

しかし、今回の事件は規則以外の問題があることも浮き彫りにした。州兵は逮捕前、機密情報をメモした紙をポケットに入れたとして上官から注意を受けていた。機密情報を扱うネットワークに不適切にアクセスしているのも目撃されていた。

問題行動が発覚した後も機密情報へのアクセスが許されていたことで、セキュリティー・クリアランスなどの仕組みだけでは機密漏洩を防げないことを突き付けた。

元米中央情報局(CIA)高官で米シンクタンク「ランド研究所」のジェームズ・ブルース氏は、同研究所のサイトで公表した論考で、機密保護に向け管理体制を「ゼロベースで再検討する必要がある」とし、抜本的な見直しを求めている。

具体的な課題では、セキュリティー・クリアランスの資格保有者が「多すぎる」と指摘。業務で必要としない人員を対象から外すべきだとしている。高いアクセス権を持つIT担当者らへの対応強化なども促している。

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