米下院のジョンソン議長(共和党)は20日、トランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)に連邦議会議事堂の女性用トイレなどの利用を認めない方針を明らかにした。「女性には女性専用のスペースが必要だ」と指摘した。米下院では、5日に投開票された連邦議会選でトランスジェンダー女性が当選したことを受け、施設内の女性専用スペースの利用を巡り論争が起きていた。
ジョンソン氏は19日、記者団に「すべての人に尊厳をもって遇すべきだ」とした上で、「男性は男性で、女性は女性だ。男性は女性になることはできない」と強調。「私が言ったことは聖書の教えだと信じている」とも述べた。
先の米下院選でトランスジェンダー女性のマクブライド氏(民主党)が初当選した。来年1月の就任を控え、共和党のメース下院議員は、生物学的な男性が議事堂の敷地内の女性専用スペースの利用を禁じる決議案を提出。19日にX(旧ツイッター)で「生物学的に男性である人を、女性専用スペースに入れることは、プライバシーの侵害であるだけでなく、私たちの安全も危険にさらす」と訴えた。
メース氏の対応について、民主党の院内総務らは反発したが、施設管理権限を持つジョンソン氏は議員部屋に個別のトイレがある上、議会内に男女共用トイレが設置されていることを挙げて、トランス女性に女性専用スペースの利用を事実上認めない考えを示した。
マクブライド氏も21日、「私はトイレについて争うためにここにいるわけではない。家庭のコスト負担の軽減のためだ」と政策実現に力を入れる考えを示して、「ジョンソン議長が示した規則に従う。たとえ同意できない場合でも」とのコメントを発表した。
メース氏は同日、Xで「われわれは同性婚を支持している。しかし、女性を守ることを差別と思うならば、それはあなたの問題だ。トランスジェンダーであろうとなかろうと、男性器を持つならば、女性用トイレに入ってほしくはない」と書き込んだ。
下院の女性専用スペースを巡る論争はひとまず決着を見た形となるが、メース氏には殺害予告の脅迫文が送られるような事態を招いている。(奥原慎平)