【ワシントン=大内清】米大統領選の激戦地である南部ジョージア州で、ハイチ系移民を名乗る黒人男性が複数カ所で事前投票を行ったと告白したとする動画が交流サイト(SNS)のX(旧ツイッター)上で拡散し、米情報機関が1日、ロシアによるディスインフォメーション(偽情報)工作と断定した。
国家情報長官室(ODNI)や連邦捜査局(FBI)などは声明で「選挙の一体性に疑念を持たせ、米国民の分断を図るロシアの工作活動の一環だ」と非難した。
動画は、ハイチから半年前に入国して米市民権を取得したと主張する黒人男性が州内の複数の郡で投票を行ったと語り、「すべてのハイチ人は家族と米国に来てほしい」と呼びかける内容。
大統領選で共和党候補のトランプ前大統領(78)は、外国人による不正投票が横行しているとの主張や、ハイチ人が中西部オハイオ州で住民のペットを「食べている」との偽情報を広め、有権者の反移民感情をあおる戦術をとっている。
ロシアには、トランプ氏のこうした主張に便乗し米世論に影響力を行使する狙いがある。CBSテレビによると今回の動画は、「ストーム1516」と呼ばれる露系組織の情報工作と特徴が共通。同組織は、激戦の東部ペンシルベニア州で黒人の開票作業員がトランプ氏への投票用紙を破り捨てているとするフェイク動画や、民主党候補のハリス副大統領(60)に関する偽情報の拡散への関与も疑われている。
ジョージア州のラフェンスパーガー州務長官(共和党)は10月31日、「動画は明白なフェイクだ」とし、Xを所有する大富豪イーロン・マスク氏にX上からの削除を求めた。だが、動画は1日午後現在もXで閲覧できる状態にある。
マスク氏はトランプ氏の有力支援者。10月にペンシルベニア州で自身の政治活動委員会(PAC)に賛同する有権者に抽選で毎日1人100万ドル(約1億5千万円)をプレゼントする活動を始め、州当局の捜査対象となっている。