【ワシントン=塩原永久】米国で中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に対する包囲網が狭まってきた。来年1月19日にティックトック規制新法が発効するのを控え、アプリ運営企業が求めた新法発効の一時停止命令を裁判所が13日に却下した。約1億7千万人が使う米国で「利用禁止」となる事態が現実味を帯びる。
ティックトックを巡っては、首都ワシントンの連邦高裁が6日、米国での利用禁止につながる規制を盛り込んだ新法を合憲と判断した。これを受け、アプリを運営する中国企業「字節跳動(バイトダンス)」側が9日、新法発効を一時停止する命令を出すよう裁判所に申し立てていた。
新法を合憲とした連邦高裁の判断は、ティックトックの利用に伴う「安全保障上の懸念」を訴えた米政府側の主張を支持した。米政府は利用者のデータが運営企業を通じて、中国側に流出するリスクがあるとみている。
議会でも警戒感が根強い。下院中国共産党特別委員会は13日、ティックトックを米国のアプリストアから削除するよう米アップルとグーグルに求めた。同委員会の共和、民主両党幹部がアップルなどに宛てた書簡は「新法の順守に必要な措置を(アップルなどが)実施しなければならない」と迫った。
ティックトック規制新法は今年4月、バイデン大統領が署名して成立。バイトダンスがティックトック米国事業を分割をして手放すか、さもなくば米国内でアプリ配信を禁じるとの内容だ。
今後、バイトダンス側が事業分割に応じ、米国企業などが買収してティックトックのサービスを続ける可能性がある。バイトダンス側は最高裁に上訴する方針で、法廷闘争次第では利用禁止を免れられる。
また新法は来年1月19日から90日間、猶予する特例を設けており、1月20日に就任するトランプ次期大統領が利用禁止を覆すこともできる。ただ米政界での厳しい対中姿勢を背景に、ティックトックが現行のサービスを維持できる道は狭まっている。