Infoseek 楽天

政権崩壊のバングラデシュ、イスラム過激組織復活の動き 指導者釈放、非合法化取り消しも

産経ニュース 2024年8月30日 15時49分

政権崩壊に伴い暫定政権が発足したバングラデシュで、国際テロ組織アルカーイダ系イスラム過激組織「アンサール・アル・イスラム」(AAI)の指導者、ムフティ・ジャシムディン・ラフマニ被告が30日までに刑務所から釈放された。バングラデシュの主要メディアが報じた。同国では強権政治に反発する暴力的な抗議デモが広がり、ハシナ首相が国外に逃亡、辞任した。ハシナ前政権下で弱体化したイスラム組織が復活する動きを見せている。

指導者釈放に批判の声

デーリー・スター紙によると、刑務所の刑務官はラフマニ被告について、「起訴されたすべての事件で保釈になり、25日に釈放された」と明らかにした。

ラフマニ被告は2013年、暴力を扇動した容疑で配下のメンバー30人とともに逮捕され、その後6件の事件で起訴された。15年にうち1件で懲役5年が言い渡され刑期を満了したものの、別の事件では裁判が進行中だ。

反テロ特別法廷の副検察官は同紙に「裁判に影響が出る可能性がある。検察側の証人は、被告に不利な証言をするために法廷に行くことを恐れるようになるかもしれない」と懸念を表明した。

専門家からも釈放を批判する声が上がる。米シンクタンク、ウィルソンセンター南アジア研究所所長のマイケル・クーゲルマン氏はX(旧ツイッター)に、「非常に悪い、奇妙にも見過ごされているニュースだ。アンサールッラー・バングラ・チーム(AAIの前身)はアルカーイダに触発され影響を受けたテロ集団だ」「ラフマニ被告は過激派の間で影響力がある」などと投稿した。

イスラム過激組織活発化に懸念

さらに、ロイター通信によると暫定政府は28日、バングラデシュのイスラム主義政党「イスラム協会」とその関連グループについて、反テロ法による非合法化措置を取り消した。テロ活動に関与した証拠は見つかっていないとしている。ハシナ前政権は抗議デモを扇動したとして同協会を非合法化していた。

ダッカでは16年、別のイスラム過激組織が飲食店を襲撃し、人質の日本人7人を殺害するテロが起きている。ハシナ前政権は過激組織を徹底して取り締まり、日本は対応を評価していた。イスラム教国のバングラデシュでは抗議デモの発生以降、少数派のヒンズー教徒が暴力に遭っており、隣国インドでもイスラム過激組織の活発化に懸念を強めているとみられる。(岩田智雄)

この記事の関連ニュース