バングラデシュで起きた政府に抗議するデモ隊と治安部隊の衝突で、同国陸軍幹部は5日、ハシナ首相が辞任し、暫定政府を発足させると発表した。衝突による死者は約300人に上っており、デモ隊は「政府は多くの学生を殺害した」とハシナ氏の首相辞任を求めていた。
ロイター通信や現地の報道によると、軍は「市民の要求を受け入れる」と表明。首都ダッカの首相公邸に押し寄せた数千人の市民に帰宅を呼び掛けた。ハシナ氏は陸軍ヘリでインドに入ったとの報道もある。
軍はまた、暫定政府について、どのような形にするかを議論するとしている。
バングラデシュでは先月、公務員採用の優遇枠を巡り学生らが政府に抗議デモを行い、治安部隊と衝突。野党支持者もデモに参加し、今月4日には、ダッカなどで、警官隊がデモ隊に催涙ガスやゴム弾を浴びせ、警官十数人を含む90人以上が死亡していた。
今年1月の総選挙は、主要野党がハシナ氏の強権政治を批判し、ボイコットした。米国も「選挙は自由で公正ではなかった」と批判。衝突はハシナ政権に対する野党や市民の不満が噴出して起きた形だ。(岩田智雄)