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ミャンマー総選挙実施見通せず 内戦激化、国軍は中国接近模索 クーデターから2月で4年

産経ニュース 2025年1月30日 7時0分

ミャンマーで国軍がクーデターで権力を掌握してから、2月1日で4年になる。軍事政権は総選挙を行うとしているものの、民主派勢力は抑え込まれたままで、地方では少数民族武装勢力と国軍の激しい戦闘が起きている。東南アジア諸国連合(ASEAN)や中国による和平へ向けた取り組みも大きな効果はなく、総選挙がいつ実施されるかは見通せない。

武装勢力攻勢、司令部陥落相次ぐ

国軍の非常事態宣言が続くミャンマーでは、市民の反発の高まりとともに内戦が深刻化した。バングラデシュとの国境付近にあるラカイン州アンでは昨年12月、少数民族ラカイン族の武装勢力アラカン軍(AA)が国軍司令部を陥落させた。ミャンマーの司令部陥落は2例目。英BBCによると、国軍は空爆で抵抗したものの、現地司令官らが拘束され、州都シットウェ以外の州内はAAに掌握されそうだ。

国内には多くの少数民族武装勢力があり、AAは他の2勢力と「3兄弟同盟」を結んでいる。その1つ中国系コーカン族のミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)は昨年8月、中国、ラオス、タイと国境を接するシャン州の都市ラショーの国軍司令部を初めて占拠した。

3兄弟同盟は今月中旬、対立を仲介した中国の要請で軍政との停戦協定に署名したが、3兄弟同盟は昨年1月にも停戦に合意した後、戦闘を再燃させている。今回の停戦も継続するかどうかは見通せない。

このほか、カチン州などでも国軍と少数民族武装勢力の戦闘が続いている。今月31日に期限切れとなる非常事態宣言は、7度目の延長が確実視される。

国民の海外脱出で人口減

一方、軍政は昨年12月末、10月に行った国勢調査の暫定結果を発表した。9月30日時点の人口は5131万6756人で、10年前の国勢調査結果より約20万人減少した。結果は有権者名簿の資料となる。

人口の減少は、内戦状態による混乱で国民の外国への脱出が続いていることを示す。しかも、一部の調査結果は「重大な治安上の課題」を理由に推計となった。約1910万人分は、外国民間プロバイダーから高解像度の衛星画像を入手して分析し、実際はさらに少ないとの指摘もある。

軍政トップのミンアウンフライン総司令官は、今月4日の独立記念日に、総選挙を実施する方針を改めて強調した。年内の投票の可能性が報道されているが、最近は来年にずれ込むとの見方も伝えられており、時期は不明のままだ。

発電量激減で停電が常態化

21年2月1日のクーデターでは、与党、国民民主連盟(NLD)の指導者アウンサンスーチー氏らが拘束された。NLDの議員らは民主派政治組織「挙国一致政府(NUG)」を発足させ、NUGは武装勢力と連携して軍政への抵抗運動を続けている。

欧米諸国などはクーデターを非難し、スーチー氏ら民主派の解放を訴えると共にミャンマーへの制裁を強めている。日本も国際機関などを経由した人道支援を除き新規の政府開発援助(ODA)を停止した。

ただ、民主政治への回復の兆しはなく、ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)は、隣国の中国とインドの関与で事態打開の糸口を探っている。

中国は軍政と関係を緊密化させており、総選挙の実施を支援するとしている。しかし、NUGは軍政主導の総選挙を断固として拒否。NLDは解党に追い込まれ、排除されている。

内戦の国民生活への影響は大きい。国営紙の今月17日の報道によると、主要送電線14本が破壊されるなどし、発電量が激減。電力供給量は、最大都市ヤンゴンで48%、首都ネピドーで35%となった。各地では停電が常態化している。(岩田智雄)

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