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シンガポールで日本人にむち打ち刑判決 経験者は「家畜のように並ばされ」 人権団体報告

産経ニュース 2024年7月5日 14時11分

シンガポールの裁判所で1日、元美容師の日本人の男(38)が地元の女子大生を性的に暴行したとして禁錮17年6月、むち打ち刑20回の有罪判決を受けた。日本人がシンガポールでむち打ち刑を受けるのは初めてという。地元の人権団体の報告書で、受刑者に恐怖を植え付ける刑罰の実態が浮き彫りになった。

シンガポールの法律は、刑事罰用のむちは籐製で直径1・27センチメートル以下と明記している。報道によると、長さは1・5メートル程度という。

むち打ち刑が適用されるのは16~50歳の男性に限られ、回数は最多で24回と定められている。窃盗や麻薬取引、性犯罪などの罪に適用される。

むち打ちをめぐる報告書は、昨年秋、シンガポールの民間団体「変革的な司法集団」が発表した。「中世のような体罰」で、受刑者に屈辱感を植え付けているとして実態を伝えた。

報告書によると、受刑者は執行日を事前通告されず、少なくとも1カ月待たされるのが通例。ある元受刑者は「当日はみんなで順番を待ち、食肉処理場に並ぶ家畜のようだった。むち打ち回数が多い人から先に執行される。外部から窓越しに見物している人もいた」と回想した。

自分の番になると、上半身裸になり、内臓防護用のカバーを装着される。尻を突き出した姿勢で「A」の字のような台に腕を固定され、刑が始まる。執行人は交代で務め、「尻の皮膚が裂けても傷が十字に重ならないよう、並行に打っていく」という。別の元受刑者は「痛くて当面は仰向けに寝られない。シャワーも浴びられない。回復には約1カ月かかる」と述べた。

むち打ちは18世紀、英植民地だったマレーシアで刑事罰として定められた。シンガポールがマレーシアから独立した後も引き継がれた。執行には医務官の立ち会いが義務付けられている。受刑者の状態が悪化して刑が継続できないと判断されれば、12カ月以下の禁錮刑に切り替えられる。

米国務省の人権報告書によると、シンガポールでは2000年代半ば、年間約4千件のむち打ちが行われた。その後、年々減少し、2016年には約1200件になった。国際人権団体は、むち打ちは拷問等禁止条約に反すると非難している。シンガポールは同条約を批准していない。

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