バングラデシュの公務員採用の優遇枠への反発に端を発した抗議デモで、首都ダッカなどで4日、ハシナ首相の辞任を求めるデモ隊と治安部隊が衝突し、現地からの報道によると、90人以上が死亡した。7月に抗議デモが発生してからの累計死者数は300人に及んだ。1月の総選挙は、野党がハシナ氏の強権政治を批判し、ボイコットしている。衝突は与党アワミ連盟のハシナ政権に対する野党や市民の反発が噴出して起きた形だ。
発端は公務員採用枠優遇制度
ロイター通信によると、ダッカなど各地で4日、警官隊がデモ隊に催涙ガスやゴム弾を浴びせ、両者が衝突した。当局は午後6時、全土に無期限の夜間外出禁止令を出した。鉄道の運行が停止し、インターネット接続も制限された。政府はまた、5日から3日間を休日とした。警官十数人を含む死者数は最近の抗議デモでは最多という。
抗議デモの発端は、パキスタンからの独立戦争に加わった兵士の子供などに対する公務員採用枠優遇制度の扱いだ。政府は批判を受け、2018年に撤廃を決定。しかし、今年6月に高裁がこれを違法とする判断を出し、全国各地で学生による抗議デモが起きた。
ハシナ首相は野党を非難
治安部隊との衝突では死者も発生。最高裁は7月21日、優遇枠をほぼ撤廃する判断を下し、いったんデモは沈静化したものの、先週になって再燃した。
デモ隊側は「政府は多くの学生を殺害した」とハシナ氏の首相辞任を要求している。市民には5日にダッカへ行進するよう呼び掛けた。
ハシナ氏は、デモ隊の暴力行為の責任は、主要野党のバングラデシュ民族主義党(BNP)やイスラム協会(JI)にあると非難。「暴力を働いているのは、学生ではなく、国家を不安定化させようとするテロリストだ」と主張している。
政権続投にくすぶる不満
バングラデシュを巡っては、今年1月の総選挙を、BNPが政党有力者が拘束されたままだなどとしてボイコット。各地で投票所や列車への放火が相次いだ。投票率は約40%と前回の半分に低迷し、米国は「選挙は自由で公正ではなかった」と批判していた。
今回の衝突は、多くの国民が反発する中で続投した政権への不満がくすぶる中で発生し、バングラデシュの民主主義や治安維持が問われる形になっている。(岩田智雄)