【台北=西見由章】台湾の頼清徳政権がトランプ次期米大統領の就任を前に、高度な米国製兵器の大規模購入を米側に打診することを検討していると報じられた。台湾に防衛費の大幅増額を求めるトランプ氏の主張を逆手にとり、これまで米国が認めてこなかった兵器の売却を求めて米側の増額圧力に先手を打つ狙いが透ける。売却が認められれば防衛力の強化につながる一石二鳥の方策だ。
シュナイダー米太平洋空軍司令官は今月、台湾周辺で中国軍用機の活動が、頼氏が就任した5月以降に「300%増加した」と発言した。台湾当局者は「中国はグレーゾーン作戦を含む最大限の圧力で台湾海峡と東シナ海、南シナ海の支配を強化しようとしている」と警戒感を高める。
英紙フィナンシャル・タイムズは今月中旬、台湾側が60機の最新鋭ステルス戦闘機「F35」など総額150億ドル(約2兆3千億円)超の兵器購入リストを検討していると報じた。
台湾当局者は具体的な購入リストの存在は否定しつつ「抑止力のために国防への投資を強化する方針は変わらない」と話す。台湾の安全保障研究者も「台湾側が望むのは、この機会を活用しバイデン政権から調達できなかった武器を買うことだ」と指摘する。
頼政権には、トランプ氏に防衛力強化への意志を示して対米関係を安定させる狙いもあるとみられる。