【北京=三塚聖平】中国南部、広東省珠海市のスポーツ施設の敷地内で11日夜、乗用車が暴走して多数の人をはねて逃走した。地元警察は12日、35人が死亡し、43人が負傷したと発表した。当局は車を運転していた62歳の男を拘束した。中国国営新華社通信は12日、習近平国家主席が、負傷者の治療を全力で行うことや、「極端な事件」の発生を防ぐよう求める重要指示を出したと伝えた。
地元警察は、男が離婚後の財産分割の結果に不満を持ったことを機に犯行に及んだとの見方を示した。男は車で人をはねた後に逃走したが警察に止められ、車内で刃物により自殺を図ろうとしていたところを制止された。病院に運ばれて治療を受けているが、首などに重傷を負って意識不明だという。警察は、証言や電子的な証拠などから動機の解明を進めている。
現場はランニングなどのため多くの人が集まる場所で、車の出入りは制限されていた。珠海では12日から中国最大の航空ショーが開催されており、国内外の注目を集めるため事件を起こした可能性もある。
中国の交流サイト(SNS)では事件に関連するハッシュタグ(検索目印)が検索できないなど投稿が一部制限されている。社会不安が増すことを中国当局が警戒しているとみられる。NHK海外放送のニュース番組が12日に同事件を伝えた際には、放送の一部が遮断されてカラーバーと「信号異常」を示す画面に切り替わった。
中国各地では、無差別な襲撃事件が頻発している。9月末には上海市のスーパーマーケットで男が来店客らを切り付け、3人が死亡、15人が負傷した。不動産不況に端を発する景気低迷により、国民の間で不満が高まっていることが背景にあるとも指摘されている。
在中国日本大使館は12日、人が集まる場所で刺傷事件などが発生していると注意喚起した。同省広州市の日本総領事館が確認したところ、被害者に日本人はいない。