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「客が途切れない」 底が見えない不動産不況 金買いに走る中国の個人投資家

産経ニュース 2024年10月18日 18時45分

中国国家統計局が18日発表した2024年7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比4・6%増で、政府の通年目標「5%前後」の達成が厳しい状況になった。中国当局は景気下支えに躍起だが、景気鈍化の主因である不動産不況に反転の気配はなく、個人投資家は不動産市場への警戒を崩していない。

金価格が24%上昇

中国南部を代表する経済都市である広東省深圳市の中心部に宝飾店が集中している一角がある。特に多くの店舗が集まるビルの地下フロアでは、平日昼にもかかわらず多数の来店客がショーケースにくぎ付けになっていた。視線の先にあるのは金(ゴールド)だ。

「去年くらいからずっと客が途切れない。資金に余裕がある人が金につぎ込んでいるようだ」

金商品を扱う宝飾店の女性店員は好調な売れ行きをこう語った。中国人は伝統的に金を好んできたが、最近は拍車がかかっている。中国国営新華社通信によると、中国国内の金価格は今年、上昇率が9月末までに24%に達して過去5年間で最大を記録した。金価格高騰を受け、販売店の新規出店が増えているほか、下取りビジネスも活性化した。

中国人民銀行(中央銀行)が外貨準備高のうち金の保有量を今年4月末まで増やし続けたことに加え、中国経済への不安感も個人投資家を金買いに走らせた。女性店員は「不動産価格の下落に伴う不安心理から、金に頼る人が増えている」と指摘。深刻化する不動産不況を前に、個人投資家は金に代表される「安全」な投資先を探している。

当局本腰も景気浮揚難しく

不動産不況は底が見えない。統計局が18日発表した9月の新築住宅価格指数は主要70都市の94%に相当する66都市で前月と比べて下落。市場の需給状況をより反映しやすい中古住宅は全70都市で値下がりした。

不動産不況の影響は大きい。不動産価格の下落が消費を冷やす逆資産効果を生じさせ、内需低迷が生産の低迷につながる悪循環に陥りつつあると指摘される。

底が見えない状況に危機感を覚えた中国共産党・政府は、重い腰を上げた。9月下旬以降、大規模な金融緩和のほか、不動産市場の支援策、財政出動を伴う経済対策の方針を示した。

中国の株式市場もこれに反応し、代表的指標である上海総合指数が今月8日には約2年8カ月ぶりの高値水準をつけた。ただ、その後は当局の政策に対する様子見ムードが広がって、乱高下の展開となっている。

不動産不況や「ゼロコロナ」政策の後遺症を背景に民間企業の経営が不安定化して庶民の雇用・所得環境が悪化していることに加え、地方政府の過剰債務や少子高齢化、米中対立といった構造的な問題もあり、景気浮揚は容易ではない。

(広東省深圳市 三塚聖平)

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