香港の民主派47人が香港国家安全維持法(国安法)の国家政権転覆共謀罪に問われた裁判で、香港高等法院(高裁)は19日、被告45人に禁錮10年~4年2月の実刑判決を言い渡した。47人は立法会(議会)選に向けて2020年7月に実施された民主派の予備選に絡んで起訴されており、香港社会を巡っては「選挙で当選を目指すことが犯罪となる」(国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ)との指摘も出ている。香港出身の民主活動家は「当たり前の権利の行使が犯罪とされる」とショックを受けつつ、「自由な香港を取り戻す」と強調する。
日本政府も判決に非難を
「平和的な政治参加と自由な言論を国家安全保障の名の下に犯罪化することは、開かれた社会の基盤を損なう権力の重大な乱用だ」
在日の民主化団体「香港民主女神(レディーリバティー香港)」は19日に声明を発表し、今回の判決をこう非難した。
声明では、香港政府に①全ての政治犯の即時解放②表現の自由の尊重③開かれた建設的な対話─3点を要求。日本政府にも、判決内容と高度な自治を認めた「一国二制度」原則の侵害への非難や抑圧される香港の人々への支援、政治亡命者としての受け入れ強化を訴えた。
団体創設者の李伊東(アリック・リー)氏は、「香港で育った者として、選挙に参加するのは当たり前の権利だった。選挙で勝利を目指す活動が犯罪とされるのは想像できなかった」と肩を落とす。
香港では3月にもスパイ活動や国家への反逆の防止などを目的とする国家安全条例が施行されており、香港の仲間と連絡を取ることのリスクも高まっている。李氏は「私も含めた海外の活動家が、自由に生活できる香港を取り戻せるように実現したい」と語る。
「安全な日本にいる自分」と葛藤も
海外在住の元香港区議らで構成する「香港公民代表会議」の日本支部代表、葉錦龍(サム・イップ)氏も判決について「中国政府の支持を受けた明らかな出来レース」と批判した。「民主派の候補者を陥れるだけではなく、民主派をサポートし、理解を示す香港人への見せしめの意味もあるのだろう」とも指摘する。20年の予備選には61万人の香港の人々が票を投じている。
葉氏は22年10月に来日した。今回訴追対象となった予備選には、立候補の一歩手前だったというだけに、複雑な思いを抱える。
葉氏は「私も被告席に座っていた可能性がある。被告らとは互いに認め合いながら、民主主義のために歩んだ仲間だ」と言及し、「日本という安全な所で活動していてよいのかという思いもある」と苦悩を語る。その上で「各国の拠点にいる仲間の力を借りて、世界に香港に関心を持ってもらえるよう、香港の未来を議論していく」と力を込めた。(奥原慎平)