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「日台関係は史上最良」台湾の李逸洋駐日代表インタビュー 「中国も民主の道歩むべき」

産経ニュース 2024年11月11日 17時53分

9月に着任した台湾の台北駐日経済文化代表処の李逸洋代表(大使に相当)が11日までに産経新聞の単独インタビューに応じた。日台関係は「史上最良の時期にある」と強調。価値観を共有する日台が米欧などと連携して「民主の保護の傘」を広げることが、「台湾海峡の平和と安定、国際社会の利益を守る最良の方法だ」と訴えた。

中国国民党批判記事で収監経験

李氏は前任の謝長廷氏に代わり、9月9日に着任した。日本メディアのインタビューに応じるのは初めて。記者を経て政界入りし、民主進歩党の陳水扁政権下で党秘書長や内政部長(内相)を歴任。蔡英文前政権で公務員人事などを担う考試院(人事院)副院長を務めた。

台湾が戒厳令下にあった1984年、雑誌「蓬萊島(ほうらいとう)」の編集長だった李氏は雑誌社社長の陳水扁元総統らとともに中国国民党政権関係者の批判記事を載せ、収監された経験がある。この「蓬萊島事件」は台湾の民主化過程において重要な意味合いを持っている。

「言論の自由を求めた結果が投獄だった。戒厳令下の不当な政治弾圧だった」と李氏。この経験から中国とは異なる自由や民主主義への思いをより強めたといい、「台湾は先人の努力や犠牲の末に民主化を勝ち取った。台湾が選んだ現在の自由と民主主義の道を信じている」と語った。

今年に入り、中南米を経由して米国に〝亡命〟しようとする中国人が急増したが、李氏は「なぜ危険を冒してまで米国を目指すのか。中国にない自由や民主主義を求めている表れではないか」と指摘する。「中国もいずれは民主主義の道を歩むべきだ。その時こそ台湾海峡の平和が実現する」と訴える。

台湾統一を狙う中国は連日、台湾海峡に軍艦などを派遣し、威圧を強めている。10月には台湾を取り囲む形で軍事演習を行った。李氏はこの後に米軍とカナダ軍の軍艦が台湾海峡を通過したことに触れ、「この航行の自由作戦は、台湾海峡が中国の内海ではないとの国際社会からのメッセージだ」と主張した。

「中国に台湾を代表する権利ない」

米国では共和党のトランプ前大統領が大統領選で勝利を収め、来年1月、第2次政権を発足させる。対中姿勢は不透明だが、李氏は「米中関係がどうであれ、米国の台湾政策は大きく変わらない。今後も緊密であり続ける」と指摘。「台湾は日米などと『民主の保護の傘』を広げ、台湾海峡の平和と安定を守り抜く覚悟だ」と述べた。

台湾は中国の反対で国連組織への参加が認められていない。中国は、中華人民共和国が国連における中国の唯一の正統な代表と認めた71年の国連総会決議2758号(アルバニア決議)を理由に「台湾は中国の一部だ」と主張し、「台湾は国際機関に参加する理由も権利もない」としている。

李氏は「決議に『台湾は中国の一部』の文言は一言もない。中国は勝手な解釈で誤解を広めている」と批判。「頼清徳総統は『中華民国(台湾)は中華人民共和国に隷属しない』と述べた。中国に台湾を代表する権利はない」とし、国連機関への参加容認を求めた。

日本企業との連携進む

台湾の世界保健機関(WHO)などへの参加を支持する日本に謝意も示した。入手困難だったコロナワクチンを日本から供与されたことにも言及し、「温かい支援を受け、台湾の人々は今でも感謝の気持ちを持っている」と述べた。

李氏は日台関係について「史上最良の友好関係にある」と評価する。最新の世論調査で、日台双方ともに全体の8割弱が相手に好意的な印象を持っているといい、2つの国・地域がこれほど〝相思相愛〟なのは「世界でも珍しい」と話した。

政界関係者の交流も活発に行われ、経済関係も強固になっている。2月には半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本工場を開所。台湾の半導体企業の日本進出が相次いでおり、半導体のサプライチェーン(供給網)で上流にあたる素材や製造装置に強みを持つ日本企業との連携が進む。

TSMCは世界の約6割の半導体を製造している。もし中国の軍事侵攻などで台湾海峡が封鎖されれば半導体の供給が滞り、世界経済に悪影響を及ぼす。李氏は「日台の連携はサプライチェーン分散の意味でも重要だ」と訴える。

課題もある。観光客数はコロナ禍前の水準に戻りつつあるが、台湾では日本統治時代に教育を受けた「日本語世代」が高齢化。日台関係を支える人材の減少が顕著で、双方ともに「知日派」「知台派」と呼べる専門人材の育成が急務だ。

李氏は「非常に重要な課題だ。現在、双方の若手研究者の共同研究プロジェクトを行うなど、いくつかの取り組みを始めている」とし、より深く日台関係に貢献する人材を増やす努力を続ける考えを示した。

李氏は着任前、日本に10回ほど来たことがあるという。「北海道の美しい紅葉や夏のラベンダー畑が印象に残っている。時間ができれば日本各地を回ってみたい」と話した。(桑村朋)

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