中国外務省の林剣(りんけん)報道官は5日の記者会見で、トランプ米政権が対中追加関税を発動したことに対し、「圧力と威嚇は中国には通用しない」と述べて反発した。同時に「現在必要なのは一方的な追加関税ではなく、対等で相互尊重の対話、協議を進めることだ」と強調し、トランプ政権に対話を呼び掛けた。
林氏は、中国政府の報復措置について、「自国の正当な権益を守る必要な行いだ」と主張した。米側が合成麻薬「フェンタニル」の米国への流入問題を挙げて追加関税を決めたことに対し、「強い不満と断固とした反対」を表明した。中国の麻薬対策は「世界でも最も厳格だ」として「フェンタニルは米国の問題だ」との考えを示した。
中国国営中央テレビ(電子版)は4日の論評で、報復措置について、「自らの発展権のための反撃であるだけでなく、多国間貿易体制と国際的な公平、正義を守るための戦いでもある」と主張した。中国側は「米国第一」を掲げて保護主義的な政策をとるトランプ政権の非を訴え、国際社会を味方につける構え。
一方で、中国政府が4日発表した一連の報復措置について、米ブルームバーグ通信は、第1次トランプ政権の時よりも中国側が「慎重なアプローチ」をとっているとの見方を示した。一例を挙げれば、米グーグルへの独禁法違反の疑いによる調査を発表したが、同社は中国本土での検索サービスから既に撤退しており影響は限定的だ。
中国は最大15%の追加関税の発動日を10日に設定しており、交渉の余地を残した。中国経済は不動産不況を背景とする景気鈍化に見舞われており、貿易戦争の激化を避けたいのが本音だ。
中国の株式市場も貿易戦争の行方を注視する。春節(旧正月)の連休明け5日の上海株式市場は代表的指標である上海総合指数が前営業日比0・65%安で取引を終えた。(北京 三塚聖平)