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台湾「ネット政治」の寵児、柯文哲氏の逮捕 台湾民衆党、二大政党への挑戦が挫折

産経ニュース 2024年8月31日 17時50分

31日に汚職容疑で逮捕された台湾民衆党の柯文哲主席(党首)は、その話術と個性的なキャラクターを生かした「ネット政治」時代の寵児(ちょうじ)だった。党創設者が汚職容疑で逮捕されたことで、台湾の二大政党政治に風穴を開けようとする第3勢力の挑戦は大きくつまずく格好となった。

著名な外科医だった柯氏は台湾大教授を経て2014年に台北市長選に無所属で出馬し当選、22年まで2期務めた。「政治の素人」を標榜(ひょうぼう)しつつ、19年に民衆党を結成。与党の民主進歩党と最大野党、中国国民党の旧態依然とした政治対立や金権政治を批判し、格差社会に不満を持つ若年層の受け皿となった。対中政策は穏健な「現状維持路線」だが、立場があいまいだとして批判する声もあった。

柯氏は芸人のような話術と親しみやすさで人気を集めた。フェイスブックのフォロワーは220万人、ユーチューブのチャンネル登録者数は113万人に達する。既成政党よりもはるかにネット戦略にたけていたのは「柯氏自身がネットに詳しいからではなく、新たなチャンスを求めて民衆党に集った若いスタッフの力によるもの」(台湾の政治研究者)だ。

柯氏はクリーンなイメージが売りで、民衆党はその柯氏の「個人政党」として出発した。それだけに、今回の逮捕容疑にとどまらない柯氏を巡る金銭スキャンダルの打撃は計り知れない。世論調査で党への支持率や好感度は下落の一途をたどっている。

民衆党幹部は8月30日に緊急会合を開き、柯氏の潔白を信じて全党が結束し支えていく方針を確認した。支持者の間には、今回の捜査が民進党政権による「政治テロ」だと主張して柯氏を擁護する声もある。しかし、柯氏の政治生命は「重傷を負った」(台湾メディア)との見方が一般的で、党勢の後退は不可避な状況だ。

台湾の立法院(国会に相当、定数113)の現有議席は国民党系54、民進党51、民衆党8で、どの党も過半数に達していない。キャスチングボートを握る民衆党が今後、強力な指導者を欠いたまま漂流していくのか、新たなリーダーの下で再び結束し再生していくのかはまだ見通せない。(台北 西見由章)

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