【北京=三塚聖平】中国やロシアなど主要新興国でつくる「BRICS」の首脳会議で、中国は枠組み拡大に意欲を示した。グローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)を取り込み、米欧諸国が中心となってきた国際秩序を修正するという戦略が背景にある。ただ、参加国の思惑は交錯しており、影響力拡大にどの程度つながるかは見通せないのが実情だ。
中国の習近平国家主席は23日の首脳会議で、参加国の拡大について「国際的枠組み変化の象徴的な出来事だ」と意義を強調した。
香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)は、BRICSについて「中国に、現在の西側主導の国際秩序に挑戦する潜在的な道を提供している」と指摘する。
習指導部は2022年の中国共産党大会で、BRICSなどの影響力を拡大させて新興国や途上国の発言権を増強するとの方針を示している。台頭する新興・途上国を取り込んで中国にとって有利な国際ルールや秩序を構築するというのがその狙いだ。
習氏は23日の首脳会議で、BRICSをグローバルサウスの団結と協力を進める主要な場と位置付けた上で、「グローバルガバナンス=多国間統治=(を正しい方向に導くため)の変革を先導する力にしなければならない」と力を込めた。
中国は先進7カ国(G7)に関し「小派閥」「国際社会を代表できない」などと批判してきた経緯がある。今後、BRICSが国際社会を代表する枠組みであるとの主張を強めていくとみられる。
ただ、BRICSは決して一枚岩ではない。米欧との貿易関係を重視するインドのほか、ブラジルも枠組み拡大には慎重だと伝えられる。
中国は今回のBRICS首脳会議に合わせ、インドとの間で国境の係争地に沿ったパトロールの取り決めについて合意した。インドとの関係改善を図り、インドの対米接近に歯止めをかける布石とみられる。
BRICSの枠組み拡大ではロシアも中国と同じスタンスだ。中国はロシアを米欧主導の国際秩序の修正を進める上での重要パートナーと位置付けている。
しかし、ロシアのウクライナ侵略やロシアと北朝鮮の軍事的な接近には距離を置く。今後の国際情勢次第では、ロシアとの〝蜜月〟を演じ続けられなくなる可能性も否定できない。