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「家族がどうなっても知らない」在日ウイグル人らに中国当局が圧力 人権団体HRWが報告

産経ニュース 2024年10月10日 15時56分

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は中国当局から受けている「圧力」の実態を巡って、日本で暮らすウイグル、チベット、内モンゴル自治区出身者らにインタビューし、「中国が海外にいる政権批判者に対して嫌がらせ」と題して、10日に結果を公表した。多くが中国当局にデモ活動の取りやめや中国人活動家の情報提供を求められ、自治区に残す親族らも脅迫めいた連絡を受けていた。HRWは「活動の自由など基本的人権は守られるべきで、圧力は許されない。日本政府も情報収集して中国政府に首脳会談などで反対を表明してほしい」と訴える。

読書会も「反中国組織か」

HRWは6月~8月にかけて、自治区出身者ら25人に聴取した。いずれも日本で、ウイグル民族弾圧への反対活動やチベット文化を紹介する活動などに関わった経験があるという。16人が当局の圧力があったと証言した。

複数の在日ウイグル人は、中国当局の関係者から中国の通信アプリ微信(ウィーチャット)などで連絡を受け、中国政府に批判的な活動を止めたうえで、日本ウイグル協会など在日のウイグル人グループの名簿の提供などを求められたという。

親戚から自治区に帰国するように求められた際、中国の警察が突然電話を代わって「さっさと帰ってこい。さもないと家族がどうなっても知らないぞ」と言われたケースもあったという。

内モンゴル自治区出身者は、読書会で同郷の活動家の著作を扱おうとしたことで、中国当局が自治区で暮らす親族を通じ「反中国の組織ではないか」などと圧力をかけられたという。当局関係者は本人に連絡し、各種イベントに参加する内モンゴル人の情報も求めたという。

「国境を越えた人権弾圧は許容しない」

チベット文化を紹介する在日チベット人は、駐日中国大使館からパスポートの更新のため帰国を促されたが、中国当局による拘束などを恐れ、勧告を拒否したという。

米議会では、外国人や帰化した人も含め、国境を越えた迫害に対応する「弾圧報告法案」が審議されている。HRWは政府も国内に居住する外国人らが、強権的な母国の当局から圧力や嫌がらせを加えられている実態を把握するシステムを作るべきだと指摘する。

HRWのアジア局プログラムオフィサー、笠井哲平氏は「中国当局は何のためらいもなく、日本で中国政府の人権侵害を批判している中国出身の人々を口封じしようとしている」と指摘する。日本政府に対しては「中国政府に、国境を越えた人権弾圧を許容しない姿勢を明確にするべきだ」と訴えた。

HRWは今回の調査結果について駐日中国大使館に見解を求める書簡を送ったが、10日の公表までに回答はなかったという。(奥原慎平)

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