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「南モンゴルのマンデラ」緊急搬送「注視を」楊海英氏、中国の軟禁下もノーベル平和賞候補

産経ニュース 2025年2月5日 14時30分

中国内モンゴル自治区出身者でつくる世界モンゴル人連盟の楊海英理事長(静岡大教授)は、1990年代以降中国当局の管理下に置かれる南モンゴル民主連盟代表のハダ氏(69)の容体が悪化したことについて、適切な医療を求めるとともに国際社会の注視を訴えた。ハダ氏は今年1月26日、日本の国会議員の推薦で今年のノーベル平和賞候補となったことが明かされた一方、同月25日に自治区の病院に緊急搬送され、危篤状態にあることがハダ氏の家族に伝わったという。

「穏健派を締め付ける」

「本人はこうなることも覚悟の上で運動を行っていた。遅かれ早かれ覚悟はできていたのだろう」

楊氏はハダ氏の現状についてこう繰り返す。

ハダ氏は80年代から内モンゴル自治区で文化大革命期の弾圧を問題視し、言論活動を通じて民族自決権の回復を求め、95年に逮捕された。「国家分離とスパイ活動」の罪で15年の刑期が言い渡され、今も当局に軟禁されているという。

楊氏は90年代前半から自治区でハダ氏と付き合いがあったといい、「穏やかな知識人」と評する。

「分離独立うんぬんは言わない穏健派だった。あくまでも中国の憲法が約束している自治の実現、不平等な状況の改善を求めていた」と述べ、「中国当局は穏健派を逮捕して、重い刑を言い渡すことで締め付けを示している」と指摘する。

「しょっちゅう殴られていた」

2023(令和5)年末、ハダ氏と同じ施設に収容されていた自治区出身者が日本に亡命し、楊氏と連絡を取ったという。ハダ氏について「危機的な状況にある。いつ命の危険にさらされてもおかしくない。しょっちゅう殴られている」と明かされた。

中国では人権活動家の劉暁波氏(2017年死去)が収監中の10年にノーベル平和賞受賞が決まった。獄中のウイグル人経済学者のイリハム・トフティ氏も20年以降平和賞の候補となっている。

ハダ氏が平和賞候補になった前後で容体が急変したことについて、楊氏は「実質上中国当局に何かをされたのだろう」と述べた。

ハダ氏の状況について「少なくとも国際社会は注視してほしい」と訴え、正常な医療を早期に施すことを中国当局に求めた。

「南モンゴルのネルソン・マンデラ」

中国の保健当局は先月25日にハダ氏が危篤状態にあることを伝え、ハダ氏の妻は病院の集中治療室で意識をほとんど失った状態のハダ氏と面会したという。多臓器不全の疑いがあるといい、原因については明かされなかった。

平和的な抵抗活動を続けるハダ氏は「南モンゴルのネルソン・マンデラ」と呼ばれ、自民党の山田宏参院議員ら4人の与野党議員は平和賞候補に推薦し、同26日にノルウェーのノーベル委員会に受理された。(奥原慎平)

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